GI/G/s待ち行列の平均待ち行列長の近似式(2)

GI/G/s待ち行列の平均待ち行列長の近似式(1)」のつづきです。



次にこの近似式

  • L_q\approx\frac{c_a^2+c_e^2}{2}L_q(M/M/s)・・・・(11)

の精度をいくつかの場合について調べます。

M/M/sの場合

まず、今までのことから式(11)はM/M/s待ち行列で正確な値を示します。

M/G/1の場合

次にM/G/1待ち行列の場合、「M/G/1における待ち時間の式の導出」に示したように

  • CT_q(M/G/1)=\frac{1+c_e^2}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・(12)

になります。ただしt_eは装置の平均処理時間です。ここでリトルの法則を用いると

  • L_q(M/G/1)=CT_q(M/G/1)\frac{u}{t_e}・・・・(13)

なので式(12)と(13)から

  • L_q(M/G/1)=\frac{1+c_e^2}{2}\frac{u^2}{1-u}・・・・(14)

となります。
一方式(11)はM/G/1なのでc_a=1s=1となり、これらを式(11)に代入すると

  • L_q(M/G/1)\approx\frac{1+c_e^2}{2}L_q(M/M/1)・・・・(15)

となりますが、式(3)にs=1を代入して

  • L_q(M/M/1)=\frac{1^1u^2}{1!(1-u)^2}p_0

よって

  • L_q(M/M/1)=\frac{u^2}{(1-u)^2}p_0・・・・(16)

であり、さらに式(4)にs=1を代入すると

  • p_0=\frac{1}{\Bigsum_{k=0}^0\frac{u^k}{k!}+\frac{u^1}{1!(1-u)}}=\frac{1}{\frac{u^0}{0!}+\frac{u}{1-u}}
  • =\frac{1}{1+\frac{u}{1-u}}=\frac{1-u}{1-u+u}=1-u

よって

  • p_0=1-u・・・・(17)

となるので、これを式(16)に代入して

  • L_q(M/M/1)=\frac{u^2}{(1-u)^2}(1-u)

よって

  • L_q(M/M/1)=\frac{u^2}{1-u}・・・・(18)

式(18)を式(15)に代入すると

  • L_q(M/G/1)\approx\frac{1+c_e^2}{2}\frac{u^2}{1-u}・・・・(19)

となるので、式(14)と一致します。つまり、M/G/1待ち行列の場合にも式(11)は正確な値を示します。

D/M/1の場合

D/M/1待ち行列の場合、「D/M/1における待ち時間の式の導出」の式(17)(18)より

  • CT_q(D/M/1)=\frac{b}{1-b}t_e・・・・(20)
    • ただしbは以下の式を満たす。
    • \frac{1}{b}\exp\left(\frac{b}{u}\right)=\exp\left(\frac{1}{u}\right)・・・・(21)

M/G/1の時と同様にリトルの法則を用いて

  • L_q(D/M/1)=CT_q(D/M/1)\frac{u}{t_e}・・・・(22)

式(22)と(20)から

  • L_q(D/M/1)=\frac{bu}{1-b}・・・・(23)

式(21)のb数値計算的にしか解けませんが、その結果を式(23)に代入することでuL_q(D/M/1)の関係のグラフを書くことが出来ます。
一方式(11)はD/M/1なのでc_a=0c_e=1s=1となり、これらを式(11)に代入すると

  • L_q(D/M/1)\approx\frac{1}{2}L_q(M/M/1)・・・・(15)

となります。式(15)に(18)を代入して

  • L_q(D/M/1)\approx\frac{u^2}{2(1-u)}・・・・(16)

式(23)の結果と式(16)の結果をグラフに書くと以下のようになります。

この結果から、D/M/1待ち行列の場合、式(11)は正確ではありませんが実用上問題ない近似であることが分かります。


ということで、式(11)はM/M/sとM/G/1では正確、D/M/1でもよい近似であることが分かりました。