GI/G/s待ち行列の平均待ち行列長の近似式を求めます。
まず、「重負荷極限定理」から
- ・・・・(1)
ここでは装置の稼働率、は平均待ち行列長、はジョブの到着間隔の変動係数、は処理時間の変動係数、です。ここからが1に近い場合の近似式として
- ・・・・(2)
を導くことが出来ます。しかしこれはの値が小さい場合に成立する保証はありません。実際、式(2)でとするととなりますがこれは正の値です。しかし、の時にはジョブがまったく到着しないのでになるはずです。このようにの値が1から離れると食い違いが出てきます。そこで、次に、についてよく知られているM/M/s待ち行列を考察することにします。
「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(3)」の式(19)と「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」の式(14)をこの場に記号をそろえて書き直すと以下のようになります。
- ・・・・(3)
- ただし
- ・・・・(4)
ここでという記号はこの平均待ち行列長がM/M/s待ち行列のものであることを示すために用いました。式(1)はGI/G/s待ち行列で成立するので、もちろんM/M/s待ち行列でも成立します。そのことを確かめておきます。まず、M/M/s待ち行列では、なので式(1)から
- ・・・・(5)
です。一方、式(3)から
- ・・・・(6)
となります。ここで
を計算します。
- ・・・・(7)
よって
よって
- ・・・・(8)
また
- ・・・・(9)
なので、式(8)(9)から
よって式(6)から
となって式(5)に一致します。このように
- ・・・・(5)
ですが、が1に近くない時には
- ・・・・(6)
です。そして式(6)の右辺はで1に収束するのでした。そこで、GI/G/s待ち行列について式(1)と(6)を同時に成り立たせる式の候補のひとつとして
- ・・・・(10)
を考えることが出来ます。これは1つの候補であって、まだ別の候補があるかもしれません。すくなくともこの近似式は、M/M/sの時に正確な値を示す点で式(2)より精度が高い近似式になっています。そこで今はこの式を採用することにします。式(10)に式(6)を代入して
よって
- ・・・・(11)