ゲーム理論の思考法

以前書きましたが「数学的推論が世界を変える 金融・ゲーム・コンピューター 」という本がとてもおもしろかったでした。その本でゲーム理論のことがコンパクトに紹介されていて、それが金融バトルで実際に使われている、と説明されていたのを読んで、ゲーム理論に興味を持ちました。そこでゲーム理論の入門書はないかと近くの図書館の蔵書を検索したところあったのがこの本です。(まだほかにも何冊かあってその中の1冊もあとで借りましたが)


ゲーム理論というのは何も本当のゲームだけのための理論ではありません。社会での交渉事全てに関係のある理論です。もちろん経済にもです。この本は入門書としてなかなかよかったです。数学的なことはまったく出てきません。でもゲーム理論の要所は押さえているようです。数学的な難しいことよりも、本のタイトルにあるようにゲーム理論ではどのような考え方をするのかということに力点をおいて書かれています。この本のキャッチフレーズは

ゲーム理論で「3つの力」を手に入れる。

  • (1)状況を俯瞰的に把握する。
  • (2)起こりうる未来を予測する。
  • (3)問題を根本から解決する。

本当に(3)が出来るかどうかは、ちょっと首を傾けたくなってしまいますが、(1)については読んでみて何だかそんな見方が出来そうな気がしてきました。(2)についても少々身についたような・・・。


最初は当たり前のことが書いてあるなあ、と思って読んでいたのですが、だんだん、普段の生活で思い当たることが出てきておもしろくなりました。利害関係のタイプについてもいくつも種類があることを知って、なるほどと思いました。それは

  • 囚人のジレンマ
  • 合理的なブタ型(変な名前ですが。  あるいはこの著者の造語かもしれません。)
  • チキンレース
  • ジャンケン型(本では「マッチング・ペニーズ」と呼ばれていますが、要するにジャンケンと同じです。)

などです。特に合理的なブタ型の利害関係については、なるほど、と啓蒙されたような気がします。これは、強いプレーヤと弱いプレーヤがいて、それでも強いプレーヤが少し譲歩したほうが結局どちらのプレーヤにとっても得になるような状況のことをいうのですが、どのような場合にどうしてそうなるのかの説明がなされています。最終の「第5章 人間は『不合理』に動く」も、短い章ながら、含蓄のある章でした。

あと著者が強調していたのは、ゲームのルール、構造をそのまま受け入れるのではなく、結果が望ましくないのならばゲームのルールを変えてしまうことの大切さです。つまり、ゲーム理論とは制度設計の理論だったんだ、というのが私の感想です。