知の逆転 吉成真由美(インタビュー・編)

この本は、6名の知的リーダーへのインタビューから成ります。その6名とは

  • 西欧の発展は、そこに住む民族の能力が他より優れていたから起こったのではなく、単にたまたま地の利がよかったことと、農業を可能にする動物。植物が、その地域にまとまって生息していただけのことであり、文明はわずかな決断の誤りによって、もろくも崩壊すると見抜いてみせた、ジャレド・ダイアモンド
  • 「全ての言語には共通する数学的な普遍文法があり、人はそれをあらかじめ持って生まれてくる」と提唱して、言語学に革命をもたらし、「エリートは必ずや体制の提灯持ちに堕する」と喝破して、米国の覇権主義を批判してきた、ノーム・チョムスキー
  • 脳の不調は思いがけず見事なほど深い物語をつむぎ、その物語は人によって実にさまざまな色彩を放つ。その一つ一つをいとおしむように拾ってみせてくれた、オリバー・サックス
  • 膨大なメモリー力にばかり頼って方向を誤ったために、役に立つロボットを福島に送ることができなかった、現代のコンピュータ研究を鋭く批判する、「人工知能」の創設者マービン・ミンスキー
  • 数学者でありながら、自らの理論を実践すべく、インターネットという大海に漕ぎ出し、数字と数式を弓矢に、情報産業という無法地帯で繰り広げられる大戦闘にいどみ、インターネットのインフラを一手に引き受けている、トム・レイトン
  • DNA二重らせん構造の解明という、素晴らしく美しい論文(わずか1ページ)で、ダーウィンに並ぶ偉業を成し遂げ、コールドスプリングハーバー研究所を第一線の研究所に育て上げるも、しばしばその圧倒的に正直な発言が物議をかもしてきた、ジェームズ・ワトソン


「知の逆転」 吉成真由美(インタビュー・編) 「まえがき」より

です。私は、この中で一番興味を持ったのは、数学者でありながら自分の理論をインタネットに応用するためにアカマイ・テクノロジーズという会社を立ち上げた(共同創立者となった)トム・レイトンです。彼の言っていることは非常に気になります。どこが私の興味を引いたかのかよくよく考えてみると、この6人のなかで彼だけがビジネスマンとして発言しているからだと、思い当たりました。彼とアカマイ・テクノロジーズのどこが気になるのか、また、あとでまとめてみたいと思います。
私が気にいった(というかフィットした)順番に人物名を挙げていきますと

となります。ジェームズ・ワトソンの発言にはあまり気配りが感じられず、この点が私の気に障ります。

  • (インタビュアー)・・・・フランクリンは、いったい何をしていれば、彼女自身がDNA構造を解明できる可能性が高くなったのでしょう。
  • (ワトソン) 残念ながら違うDNAを持って生まれてくる必要があったでしょう。彼女には社交性というものがなく、どうやって他の人とつきあっていいのかわからなかった・・・・・ハッキリ言って、彼女はノーベル賞に値しない。ノーベル賞は敗者には与えられない。・・・・彼女には何カ月も自分で問題を解く時間があったのに、どうやって解釈していいかわからなかった。・・・・・

このようなワトソンの発言に比較して、オリバー・サックスの発言には温かみが感じられます。


もっと、この本の感想を書きたかったのですが、疲れてきたので、今日はここまで。
それにしても、インタビュアーの吉成真由美氏の問題意識がすごい。