アカマイ・テクノロジーズの気になる点

知の逆転 吉成真由美(インタビュー・編)」で書いたように、この本

に登場するアカマイ・テクノロジーズという会社に私は何か興味をひかれるものを感じます。それが何なのか、少し考えてみたいと思います。ところで「アカマイ」という言葉はハワイの言葉で「賢い」とか「知的である」という意味だそうです。このアカマイ・テクノロジーズの創立者の1人であり、MITの応用数学の教授でもあるトム・レイトンは、この本の中で、「将来は――無限の可能性があります!」と言って、アカマイ・テクノロジーズの将来の活動分野として次の4つを挙げています。

  • 1.メディア分野
    • 近い将来メディアの大部分がオンラインになる。そうなると、交通量は今(2011年時点)の500倍程度になる。
    • どうやってそれだけんほ配信を低コストで行うか→現在の1%のコストで500倍の配信を可能にすることを目指す。
  • 2.商業分野
    • 携帯でのオンライン商取引が拡大する。
    • 携帯でウェブサイトを動かすためにはいろいろ解決すべきことがある。
    • 商活動では莫大なお金が動き、サイトの立ち上がりを4秒から2秒に短縮するだけで、収益がはね上がるということも研究で明らかにされているので、たいへんな可能性が広がっている。
  • 3.企業分野
    • カスタマー・リレーションズや企業間の商取引のサポート、本社・支社どうしのやり取り、企業データベースへの社員によるアクセス、CRMのアプリケーションなどを、速くスムーズに行えるようにサポートする。
    • セキュリティ問題が最重要
    • 急成長している。
  • 4.ネットワーク部門
    • 交通量が増えてくると主要なネットワークにストレスがかかる。
    • 多くのネットワークが既に借金を抱え、歳入は増えていかない状態。
    • ネットワークの内容にまで踏み込んで、どうやって収益が上がるようにネットワークを運用していくかを探る。


1はトム・レイトンの最初の理論に基づく(とは言え、私にはどんなものかよく理解出来ないですが)、インタネットでいかに効率的にデータを転送するかについての革新的な技術を基盤にしている、と私は解釈します。2についても、基盤は1と同じ、インタネットの効率的な運用に関わるソリューションであると思います。3については、アカマイのもうひとつの側面である、ネットワーク・セキュリティーの提供者としての強みに基づいていると考えます。4は、これもインタネットをいかに効率的に使用するか、という技術を基盤としている、と思います。
どうも私は、限られたリソースをいかに効率的に利用するか、というところに興味をひかれたようです。そして、そのリソースがネットワーク形状をしているところにも興味が惹かれます。


ところで、このトム・レイトン教授は、数学的思考がビジネスでも大いに役立ったと言っています。

そうですね。全く違う世界でした(笑)。でも、数学的思考というもの、つまり、非常に論理的なアプローチの仕方や、常に疑問を呈して細部をえぐっていくという手法、こういう数学的な思考法がビジネスの世界でもとても有効だったのです。往々にして、表面的には正しくうまく行っているように見えても、深く探っていくとそうでなかったりする。数学とは本来そういうものですから。
 授業で例に使うんですが、n^2+n+41という数式にn=0を入れてみると、答えは41という素数になります。n=1なら1^2+1+41で、43で素数n=2なら4+2+41で、47で素数となり、20回30回とそのまま計算を続けても、答えはいつも素数になります。ビジネスの世界なら、10回20回も計算せず、数回計算しただけで、「いつも答えは素数になる。それで決まりだ」となる。ところが実際はそうじゃない。nに40や41またはそれ以上の数を入れてみると、答えはもう素数ではなくなる。
 数学というのはもともと証明と確定性の学問で、「ある事柄は正しいように見える」というところから論理的に詰めていって、「ある事柄は真実だ」というところまで突き詰めるわけです。この数学的な訓練が、具体的な状況でビジネス上の決断を下すのに役立っていると思います。決断が多くの場合正しいからです。


「知の逆転」吉成真由美(インタビュー・編)の「第5章 サイバー戦線異常あり――トム・レイトン」より


でも、そうなのか私は疑問に思ってしまいます。そこまで厳密に考えていたら判断にスピードが出なくなって、チャンスを逃がしてしまいがちになるのではないか、と思うのですが。熟考すべき時、と、即決すべき時、この2つの時を正しく見分けることが大切なのかもしれません。しかしでも、どうやって?