バッチ装置の待ち行列の解析(3)
ここでは、「バッチ装置の待ち行列の解析(1)」の式(6)
- ・・・・(6)
をnジョブのバッチの場合に拡張することを検討します。装置は1台に限定します。バッチ構成ルールは
- ジョブがn個そろうまで装置が空いていても処理を開始しない。処理は必ずnジョブで行う。
です。このバッチ構成ルールで運用されるバッチ装置でのジョブの装置待ち時間は「[バッチ装置の待ち行列の解析(1)」の時と同様に、到着したジョブをn個そろえる処理と、n個そろってバッチになったジョブを装置の待ち行列に入れる処理(装置が空いていれば即、装置で処理を開始する処理)、の2つに分けて考えることが出来ます。
最初のバッチを構成する処理では、ジョブがn個溜まらないと次の待ち行列に進みません。ということはジョブの到着順を数えてn番目毎にバッチが待ち行列に到着することになります。
バッチが構成された時点に到着したジョブをジョブ0とします。ジョブ0はバッチ内で最後に到着したジョブになります。次に到着するジョブをジョブ1とし、その次をジョブ2、その次のジョブ3・・・としてジョブnまで考えます。ジョブnが到着することによって次のバッチが完成します。
- ジョブ0とジョブ1の到着間隔を、
- ジョブ1とジョブ2の到着間隔を、
- ・・・・
- ジョブn−1とジョブnの到着間隔を、
と表わすことにします。ジョブ1は
- ・・・・(7)
だけ待ちます。は到着間隔なので変動します。その平均はの値に関わらずです。従って式(1)の平均待ち時間はになります。同様に考えて、
- ジョブ2の平均待ち時間は
- ジョブ3の平均待ち時間は
- ・・・・
- ジョブn−1の平均待ち時間は
- ジョブnの平均待ち時間はゼロ
となります。ジョブ1からジョブnまで平均をとれば、ジョブ全体でのバッチ構成平均待ち時間になります。バッチ構成平均待ち時間をで表わすと
- ・・・・(8)
となります。
次に、バッチが装置の待ち行列に投入される処理について考えると、まずバッチの到着の間隔は図6から考えると
- ・・・・(9)
となります。これは変動する値です。これの平均を考えるとになります。つまりバッチの平均到着間隔はです。次にバッチの到着の間隔の標準偏差は「独立な確率変数の和の分散」を参考にして考えればジョブの到着間隔の標準偏差の倍になることが分かります。ここでジョブの到着間隔の標準偏差をで表わせば、バッチの到着間隔の標準偏差はとなります。次にバッチの到着の間隔の変動係数は標準偏差を平均で割ったものですから、
となります。ここでジョブの到着間隔の変動係数をで表わすと
なのでバッチの到着間隔の変動係数はになります。するとKingmanの近似式により、待ち時間をとすると
- ・・・・(9)
となります。ただし、は装置の稼働率であり、バッチの平均到着間隔と装置の平均処理時間から
- ・・・・(10)
で求めることが出来ます。全体の平均待ち時間は式(8)(9)から
- ・・・・(11)
となります。さらに式(10)から
- ・・・・(12)
となりますので、式(4)(5)から
- ・・・・(13)
となります。