次に
- 装置が空いている時に1ジョブ到着した場合は、1ジョブで処理を開始する。処理が完了した時に1ジョブしか待っていない場合は、1ジョブで処理を開始する。処理が完了した時に2ジョブ以上ある場合は、2ジョブで処理を開始する。
というバッチ構成ルールの場合、ジョブの平均待ち時間と装置稼働率の関係はどうなるか考察します。まだ、この考察をnジョブバッチの場合に拡張するところまで出来ていません。今は、2ジョブで1バッチの装置の場合のみを考えます。さらに、この考察は到着がポアソン到着、装置の処理時間の分布が指数分布の場合のみの考察です。他の場合は難しいのでこの場合の考察を最初に進めました。
さて、最初に考えなければならないのは稼働率をどう定義するかです。この装置の場合、1ジョブでも2ジョブでも稼働します。まったく装置の空き時間がなく、常に1ジョブで処理をしている場合、それは稼働率100%でしょうか、それとも最大2ジョブで処理出来るので、この装置の稼働率は50%でしょうか? これはどちらが正しいかの問題ではなくて、どう定義するかの問題ですが、ここでは後者を採用します。そして装置の空き時間には関係なく、稼働率を「バッチ装置の待ち行列の解析(1)」の式(2)
- ・・・・(2)
で定義することにします。はゼロから1まで変動する値になります。
次に状態を定義します。状態は、処理中かどうか(処理中の場合、1ジョブでの処理なのか2ジョブでの処理なのかは区別しない)と、待ちジョブ数で区別します。のちの数式を書き易くするために状態を以下の数で示します。
- 待ちジョブ数が0の場合
- 装置が空いていれば
- 0
- 装置が処理中ならば
- 1
- 装置が空いていれば
- 待ちジョブ数が1以上の場合
- 待ちジョブ数+1
装置が処理中の場合、それが1ジョブでの処理なのか2ジョブでの処理なのかを区別しない理由は、そのほうが状態遷移図が簡単になるからです。状態を表わす数字とそれが表わす状態の関係を図7に示します。
次に状態遷移図を書いていきます。まず、任意の時間間隔の間にジョブが1つ到着して状態0から状態1になる確率は、ポアソン到着なので
- ・・・・(14)
となります。任意の時間間隔の間に装置の処理が終了して状態1から状態0になる確率は、指数分布なので
- ・・・・(15)
になります。装置が1ジョブを処理していても2ジョブを同時に処理していても式(15)が成り立つことに注意して下さい。ここで式(14)に「バッチ装置の待ち行列の解析(1)」の式(5)
- ・・・・(5)
を適用するとジョブが1つ到着して状態0から状態1になる確率は
- ・・・・(16)
になります。式(15)と式(16)の関係を図8に示します。
ただし図8では、を省略しています。次に状態1を中心に考えると、任意の時間間隔の間にジョブが1つ到着して状態1から状態2になる確率はやはり式(16)になり、任意の時間間隔の間に装置の処理が終了して状態2から状態1になる確率はやはり式(15)になります。しかし、状態1が遷移先になるような遷移はこれだけではなく状態3から状態1への遷移もあります。それは図9のような遷移です。
任意の時間間隔の間に装置の処理が終了して状態4から状態1になる確率はやはり式(15)になります。一方、状態4から状態3への遷移はありません。ジョブが2個以上待っていれば次は必ず2個で処理することになるからです。以上のことを状態遷移図に書き加えると図10のようになります。
以下同様に考えると、状態遷移図は図11のようになります。
この状態遷移図からまず状態0の出入りが等しいとして平衡方程式を立てると
となり
- ・・・・(17)
となります。ただしは定常状態時の状態の確率です。状態1について平衡方程式を立てると
となり
- ・・・・(18)
となります。として状態について平衡方程式を立てると
となり
- ・・・・(19)
となります。
まとめると
- ・・・・(17)
- ・・・・(18)
- ・・・・(19)
となります。