バッチ装置の待ち行列の解析(9)

では、「バッチ装置の待ち行列の解析(6)」で求めた「なりゆきバッチルール」の場合のジョブの平均待ち時間の式

  • CT_q=\frac{au}{[1+(2-a)u](1-au)}t_e・・・・(46)
  • ただし
    • a=2  (u=0)
    • a=\frac{-1+\sqrt{1+8u}}{2u}  (u>0)・・・・(36)

を、一般の到着間隔分布、一般の処理時間分布の場合に拡張することを考えます。


私が最初に考えたのは、GI/G/1待ち行列における平均待ち時間のKingmanの近似式

  • CT_q\approx\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\cdot\frac{u}{1-u}t_e・・・・(52)

とM/M/1におけるM/M/1待ち行列の平均待ち時間の式

  • CT_q=\frac{u}{1-u}t_e・・・・(53)

の対比から、M/M/1の場合の平均待ち時間をCT_q(M/M/1;u,t_e)と表わした時、GI/G/1の場合の平均待ち時間が

  • CT_q\approx\frac{c_a^2+c_e^2}{2}CT_q(M/M/1;u,t_e)・・・・(53)

と書けることです。私はこの類推として式(46)に

  • \frac{c_a^2+c_e^2}{2}

を掛けて出来た

  • CT_q\approx\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{au}{[1+(2-a)u](1-au)}t_e

という近似式を考えました。しかし、この近似式には根拠がないことが分かりました。というのは式(52)の根拠のひとつは重負荷極限定理(「重負荷極限定理」の式(1)参照)

  • \lim_{u\rightar{1}}(1-u)L_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}・・・・(54)

です。実際に、式(52)から

  • L_q=CT_q\times\frac{u}{t_e}・・・・(55)

なので

  • L_q\approx\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\cdot\frac{u^2}{1-u}・・・・(56)

となり

  • (1-u)L_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}u^2・・・・(57)

なので、式(54)が成り立ちます。


ところが2ジョブバッチ、「なりゆきバッチルール」の場合、式(54)が成り立ちません。そのことを確かめます。ポアソン到着、指数分布処理時間の2ジョブバッチ、「なりゆきバッチルール」の場合の平均待ち行列L_qは「バッチ装置の待ち行列の解析(6)」の式(43)ですでに求められていて

  • L_q=\frac{2au^2}{[1+(2-a)u](1-au)}・・・・(43)

でした。よって

  • (1-u)L_q=\frac{2au^2}{1+(2-a)u}\cdot\frac{1-u}{1-au}・・・・(58)

となります。u\rightar{1}になると式(36)からa\rightar{1}になります。よって

  • \frac{2au^2}{1+(2-a)u}\rightar\frac{2}{2}=1

となります。

  • \frac{1-u}{1-au}・・・・(59)

のほうはこの形のままでは0/0になって値が分かりません。そこで式(59)に(36)を代入して変形していきます。

  • \frac{1-u}{1-au}=\frac{1-u}{1-\frac{-1+\sqrt{1+8u}}{2}}=\frac{2(1-u)}{2+1-\sqrt{1+8u}}=\frac{2(1-u)}{3-\sqrt{1+8u}}
    • =\frac{2(1-u)(3+\sqrt{1+8u})}{9-1-8u}=\frac{2(1-u)(3+\sqrt{1+8u})}{8-8u}=\frac{3+\sqrt{1+8u}}{4}

よって式(59)はu\rightar{1}で3/2に近づきます。よって

  • \lim_{u\rightar{1}}(1-u)L_q=\frac{3}{2}・・・・(60)

になります。しかしもし式(54)が成り立つとすると、今考えているのはc_a=1c_e=1の場合なので式(54)の右辺は1になり、式(60)の3/2と一致しません。よって式(54)は成り立ちません。よって上に私が提案した近似式も根拠がないことになります。