最近ジョブ数有限の待ち行列を取り上げているのは、一般的なジョブ数有限の待ち行列の定常状態確率分布の近似式はないか知りたいからです。まず、M/G/1/1については正確に定常状態確率分布を求めることが出来ました(「M/G/1/1待ち行列(4)」参照)。M/G/s/sについてもおそらくM/M/s/sと同じ定常状態確率分布であろうという推測も出来ました。もしこの推測が正しければM/M/s/s待ち行列についてはすでに定常状態確率分布はよく知られているので、M/G/s/s待ち行列についても定常状態確率分布が計算できることになります。一方、ジョブ数の上限値が大きくなれば分布がM/G/1の分布に近づいてくることは容易に想像出来ます。M/G/1の定常状態確率分布については近似式をすでに求めておりました(「M/G/1定常状態分布の近似式」参照)。これを元にして近似式を作ることも考えられます。
しかし近似式を作るには、まず正確な値がどのくらいか調べる必要があります。全ての場合について正確な値を求めることが出来ればそれが理想なのですが、それが出来なくても代表的な場合についての値を求めておく必要があります。そこで、ここでは待ち行列について定常状態確率分布を求めてみようと思います。
- 図1
待ち行列の状態遷移図を書くと左の図のようになります。丸の中の数字が状態を示します。状態0はジョブが0個の状態、ジョブ1:1はジョブが1個でサービスのフェーズが1の状態、ジョブ1:2はジョブが2個でサービスのフェーズが2の状態、ジョブ2:1はジョブが2個で、(そのうち1個はサービスを受けていて)サービスのフェーズが1の状態、ジョブ2:2はジョブが2個で、(そのうち1個はサービスを受けていて)サービスのフェーズが2の状態、です。
この状態遷移図から平衡方程式を作成すると以下のようになります。まず、状態0に出入りする流量に注目すると
ここから
- ・・・・(1)
次に状態1:1を出入りする流量に注目すると
- ・・・・(2)
次に状態1:2を出入りする流量に注目すると
- ・・・・(3)
式(3)に(1)を代入して
よって
- ・・・・(4)
サービスのフェーズに関わらずジョブが1個の状態の定常状態確率をとすると式(1)(4)を用いて
よって
- ・・・・(5)
式(4)を(2)に代入して
よって
よって
- ・・・・(6)
次に状態2:1を出入りする流量に注目すると
よって
- ・・・・(7)
式(7)に(4)を代入して
- ・・・・(8)
サービスを受けているジョブのサービスのフェーズに関わらずジョブが2個の状態の定常状態確率をとすると式(6)(8)を用いて
よって
- ・・・・(9)
全ての状態の確率の和は1でなければならないので
よって
- ・・・・(10)
式(10)を(5)に代入して
- ・・・・(11)
式(10)を(9)に代入して
- ・・・・(12)
以上で待ち行列の定常状態確率分布を求めることが出来ました。