パターン認識(2)

次に、数字の1を認識するニューロンを構成することを考える。たとえば、以下の図

  • 図4

のようなパターンにのみ反応するニューロンを作ることは「パターン認識(1)」と同じように考えれば可能であることが分かる。


しかし、人間ならばこの数字の1が多少左右にずれていても同じ1だと認識するだろう。であるからここは、図4のパターンだけを1と認識するのではなく

  • 図5

のようなパターンも同じ1と認識してほしい。そのようなことが可能だろうか?
これらのどのパターンを見せても出力y=1を出すニューロンを構成することは可能である。それはたとえば

  • h=-1000

とおけば

  • y=1\left(\Bigsum_{i=1}^5\Bigsum_{j=1}^7s_{ij}x_{ij}-h\right)・・・・(2)

x_{ij}の値のどんな組み合わせであってもy=1となる。しかし、今ここで求めているのはそういうことではない。ここで求めているのは上記の図4と図5のパターンではy=1となり、それ以外のパターンでは必ずy=0となることである。そのようにマカロッツ=ピッツのニューロンを構成することが出来るだろうか?


実はこれは構成出来ない。構成できないことを反例を示すによって明らかにする。その反例とは、図4

  • 図6

  • 図7

についてはy=1を出力し、

  • 図8

についてはy=0を出力するような(単独の)ニューロンは存在しない、というものである。その理由を以下に示す。


まず、図6のパターンでy=1となるためには、式(2)から

  • s_{41}+s_{42}+s_{43}+s_{44}+s_{45}+s_{46}+s_{47}{\ge}h・・・・(5)

でなければならない。同様に図7のパターンでy=1となるためには、同様に

  • s_{21}+s_{22}+s_{23}+s_{24}+s_{25}+s_{26}+s_{27}{\ge}h・・・・(6)

でなければならない。同様に図8のパターンでy=0となるためには

  • s_{21}+s_{22}+s_{23}+s_{24}+s_{25}+s_{26}+s_{27}
    • [tex:+s_{41}+s_{42}+s_{43}+s_{44}+s_{45}+s_{46}+s_{47}

でなければならない。
式(5)(6)から

  • s_{21}+s_{22}+s_{23}+s_{24}+s_{25}+s_{26}+s_{27}
    • +s_{41}+s_{42}+s_{43}+s_{44}+s_{45}+s_{46}+s_{47}{\ge}h・・・・(8)

これは式(7)と矛盾するから、図6、7でy=1、図8でy=0となるようなニューロンは存在しないことが明らかになる。このように

  • 図3

の構成ではパターン認識能力に限界がある。