神経回路網の自己組織と神経場のパターン力学 甘利俊一著(3)

時間tでのこの細胞の発生する出力パルスの頻度z(t)u(t)の関数で

        • z(t)=f\left[u(t)\right]・・・・(2)
      • のように書ける。一般に出力関数fは図2
        • 図2 出力関数
      • に示すような単調増加関数であり、特に単位階段関数1(u)を用いて
        • f(u)=1(u)=\left\{\begin{array}1&\;&u>1\\0&\;&u{\le}0\end{array}・・・・(3)
      • とおいた場合には、出力 は0, 1の二値をとる。


神経回路網の自己組織と神経場のパターン力学――甘利俊一著――生物物理 Vol. 21 No.4 (1981)」より

この箇所は「マカロック・ピッツのモデル(2)」で記したことと同じです。

      • ここで、入力信号の組(x_1,x_2,\cdots,x_n)と対応するシナプス荷重の組(s_1,s_2,\cdots,s_n)をベクトルで表わすことにし、
        • \under{x}=(x_1,x_2,\cdots,x_n)、 \under{s}=(s_1,s_2,\cdots,s_n)
      • としよう。\under{x}を入力信号ベクトルまたは単に入力信号といい、\under{s}シナプス荷重ベクトルまたは単にシナプス荷重という。両者の内積
        • \under{s}\cdot\under{x}=\Bigsum_{i=1}^ns_ix_i
      • は、神経細胞に入る刺激の(荷重付き)総和である。


神経回路網の自己組織と神経場のパターン力学――甘利俊一著――生物物理 Vol. 21 No.4 (1981)」より

これは単に記法の説明です。


      • 一般に、(1)の時定数\tau'は小さいから、入力\under{x}が一定であれば、(1)のu(t)はすぐに平衡状態
        • u=\under{s}\cdot\under{x}-h・・・・(4)
      • に収束する。したがって、入力信号\under{x}の時間変化がゆっくりならば神経細胞の入出力関係を
        • z=f(u)=f(\under{s}\cdot\under{x}-h)・・・・(5)
      • と書いてよい。


神経回路網の自己組織と神経場のパターン力学――甘利俊一著――生物物理 Vol. 21 No.4 (1981)」より

これは私が「神経回路網の自己組織と神経場のパターン力学 甘利俊一著(2)」でメモとして書いたことを簡潔に述べたものと思います。以下、この論文では入力信号\under{x}の時間変化が時定数\tau'に比べてゆっくりであると仮定して式(5)を前提にして話を進めていきます。「神経回路網の自己組織と神経場のパターン力学 甘利俊一著(2)」で登場した式(1)

  • \tau'\dot{u}=-u(t)+\Bigsum_{i=1}^ns_ix_i-h・・・・(1)

を気にする必要はありません。また、この論文では明記されていないのですが\under{s}の変化も時定数\tau'に比べてゆっくりであると仮定してよいと思います。というのは、あとで出てくるように\under{s}\under{x}を受信して始めて変化するからです。