4次元の超球の表面積

ガンマ関数(5)」で

  • \Bigint_0^\infty\Bigint_0^{\infty}\Bigint_0^{\infty}\exp(-x^2-y^2-z^2)dxdydz・・・・(1)

の計算をする際に(x,y,z)から極座標(r,\theta,\varphi)に置換えて計算しましたが、よく考えると\exp(-x^2-y^2-z^2)の部分はrにだけ依存するので、これに半径rの球の表面積の1/8を掛けてやり、それをr積分すれば式(1)を計算したことになります。なぜ球の表面積の1/8かというと、\theta\varphi積分の範囲が0から\pi/2までなので

  • 図1

上の図に示すようにrを固定して\theta\varphiを変化させた時に出来る図形が球の表面の1/8になるからです。そこで半径rの球の表面積をS(r)で示すことにすると

  • \Bigint_0^\infty\Bigint_0^{\infty}\Bigint_0^{\infty}\exp(-x^2-y^2-z^2)dxdydz=\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)\frac{S(r)}{8}dr・・・・(2)

が成り立ちます。実際、「ガンマ関数(5)」の式(26)(ここでは式の番号を振りなおして式(3)とします。)

  • \Bigint_0^\infty\Bigint_0^{\infty}\Bigint_0^{\infty}\exp(-x^2-y^2-z^2)dxdydz=\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)r^2\cos\varphi{dr}d\theta{d}\varphi・・・・(3)

の右辺を変形すると

  • \Bigint_0^\infty\Bigint_0^{\infty}\Bigint_0^{\infty}\exp(-x^2-y^2-z^2)dxdydz=\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)\left[\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}r^2\cos\varphi{d}\theta{d}\varphi\right]dr・・・・(4)

となりますが、この右辺の中の

  • \Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}r^2\cos\varphi{d}\theta{d}\varphi

を計算すると

  • \Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}r^2\cos\varphi{d}\theta{d}\varphi=r^2\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}d\theta\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\cos\varphi{d}\varphi=r^2\cdot\frac{\pi}{2}[sin\varphi]_0^{\pi/2}=\frac{\pi{r}^2}{2}

となります。一方、球の表面積はS(r)=4\pi{r}^2なので上の式から

  • \Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}r^2\cos\varphi{d}\theta{d}\varphi=\frac{S(r)}{8}・・・・(5)

となることが分かります。よって式(5)を(4)に代入すれば式(2)になります。


ということは逆に考えると

  • \Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}r^2\cos\varphi{d}\theta{d}\varphi

を計算することで球の表面積を求めることが出来る、ということになります。これを拡張したら4次元の超球の表面積(4次元の超球の表面は3次元になるはずだから、「超」表面積と言うべきでしょうか?)も求めることが出来るそうです。


しかし、ここで、はたと困ってしまうのは、4次元の極座標というものを図示出来ないために、積分をする際の微小面積要素(3次元の極座標におけるr^2\cos\varphi{d}\theta{d}\varphiにあたるもの)が直感的には分からないということです。しかし何とか頑張ってみましょう。
4次元の極座標r,\theta,\varphiに加えて4番目の座標(角度)を\lambdaで表すことにします。すると3次元の極座標からの類推で、微小面積要素(直方体)の各辺は以下のようになると思います。まず、\lambdaの変化d\lambdaに対応する辺の長さはd\lambdaです。次に半径rが超平面x,y,zに投影されたのが図1のrにあたると考えれば、これはrではなくr\cos\lambdaになります。よって、d\varphiに対応する辺の長さはr\cos\lambda{d}\varphid\thetaに対応する辺の長さはr\cos\lambda\cos\varphi{d}\thetaになります。よって微小面積要素はr^3\cos^2\lambda\cos\theta{d}\theta\varphi\lambdaになります。\theta,\varphi,\lambda積分の範囲は全て0から\pi/2までにします。このようにするとこれは4つの超平面で超球がそれぞれ半分に分割されたものになりますので、4次元の超球の表面積の1/16になります。4次元の超球の表面積をS_4(r)で表すことにすると以上のことから

  • \frac{S_4(r)}{16}=\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}r^3\cos^2\lambda\cos\theta{d}\theta{d}\varphi{d}\lambda・・・・(6)

となります。式(6)の右辺を計算すると

  • \Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}r^3\cos^2\lambda\cos\theta{d}\theta{d}\varphi{d}\lambda=r^3\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}d\theta\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\cos\varphi{d}\varphi\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\cos^2\lambda{d}\lambda=r^3\cdot\frac{\pi}{2}[\sin\varphi]_0^{\pi/2}\Bigint_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\cos2\lambda+1}{2}{d}\lambda
    • =\frac{\pi{r}^3}{2}\cdot\frac{1}{2}\left[\frac{\sin2\lambda}{2}+\lambda\right]_0^{\pi/2}=\frac{\pi{r}^3}{2}\cdot\frac{1}{2}\cdot\frac{\pi}{2}=\frac{\pi^2r^3}{8}

よって

  • \frac{S_4(r)}{16}=\frac{\pi^2r^3}{8}

よって

  • S_4(r)=2\pi^2r^3・・・・(7)

となります。