n次元の超球の表面積

4次元の超球の表面積」では4次元の超球の表面積を求めました。では5次元の超球の表面積は求められるでしょうか? 4次元の極座標を考えるだけでも大変だったのに5次元になるともっと大変そうです。ところが「4次元の超球の表面積」を見直すと別の計算方法が見えてきました。まずは3次元の場合ですが、

  • \Bigint_0^\infty\Bigint_0^{\infty}\Bigint_0^{\infty}\exp(-x^2-y^2-z^2)dxdydz=\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)\frac{S(r)}{8}dr・・・・(2)

をもう一度考えます。この式の左辺は「ガンマ関数(5)」の式(25)(ここでは式の番号を振り直して式(8)とします)

  • I^3=\Bigint_0^{\infty}\exp(-x^2)dx\cdot\Bigint_0^{\infty}\exp(-y^2)dy\cdot\Bigint_0^{\infty}\exp(-z^2)dz=\Bigint_0^\infty\Bigint_0^{\infty}\Bigint_0^{\infty}\exp(-x^2-y^2-z^2)dxdydz・・・・(8)

からI^3であり、Iはすでに「ガンマ関数(3)」でI=\frac{\sqrt{\pi}}{2}であることが分かっています。よって式(2)は

  • \left(\frac{\sqrt{\pi}}{2}\right)^3=\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)\frac{S(r)}{8}dr・・・・(9)

となります。3次元の球の表面積は2次元ですからS(r)r^2に比例することが分かります。そこでAを定数として

  • S(r)=Ar^2・・・・(10)

とおくと式(9)は

  • \left(\frac{\sqrt{\pi}}{2}\right)^3=\frac{A}{8}\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)r^2dr・・・・(11)

となります。式(11)の右辺は「ガンマ関数(4)」の式(24)(19)(ここでは式の番号を振り直して式(12)(13)とします)

  • \Bigint_0^{\infty}t^n\exp(-t^2)dt
    • nが0以上の偶数の場合
      • =\frac{n!}{2^{n+1}\left(\frac{n}{2}\right)!}\sqrt{\pi}・・・・(12)
    • nが1以上の奇数の場合
      • =\frac{1}{2}\left(\frac{n-1}{2}\right)!・・・・(13)

n=2とすれば

  • \Bigint_0^{\infty}t^2\exp(-t^2)dt=\frac{2!}{2^3}\cdot{1}!\sqrt{\pi}=\frac{\sqrt{\pi}}{4}

となることを考えれば式(11)は

  • \left(\frac{\sqrt{\pi}}{2}\right)^3=\frac{A}{8}\frac{\sqrt{\pi}}{4}

よって

  • \frac{\pi\sqrt{\pi}}{8}=\frac{A}{8}\frac{\sqrt{\pi}}{4}
  • \pi=\frac{A}{4}
  • A=4\pi

これを式(10)に代入して

  • S(r)=4\pi{r}^2・・・・(14)

確かにS(r)は球の表面積の式になります。


4次元の場合は、式(9)を4次元の場合に拡張して

  • \left(\frac{\sqrt{\pi}}{2}\right)^4=\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)\frac{S_4(r)}{2^4}dr・・・・(15)

になります。4次元の超球の表面積は3次元ですからA_4を定数として

  • S_4(r)=A_4r^3・・・・(16)

とおくことが出来ます。式(16)を(15)に代入して

  • \left(\frac{\sqrt{\pi}}{2}\right)^4=\frac{A_4}{2^4}\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)r^3dr
  • \pi^2=A_4\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)r^3dr・・・・(17)

上の式(13)を用いれば

  • \pi^2=A_4\frac{1}{2}\cdot{1}!=\frac{A_4}{2}

よって

  • A_4=2\pi^2

となり、これを式(16)に代入して

  • S_4(r)=2\pi^2r^3・・・・(7)

となり、「4次元の超球の表面積」で求めた結果と一致します。


これを一般のn次元の超球に拡張します。n次元の超球の表面積をS_n(r)で表します。式(15)を拡張すると

  • \left(\frac{\sqrt{\pi}}{2}\right)^n=\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)\frac{S_n(r)}{2^n}dr・・・・(18)

になります。n次元の超球の表面積はn-1次元ですからA_nを定数として

  • S_n(r)=A_nr^{n-1}・・・・(19)

とおくことが出来ます。式(19)を(18)に代入して

  • \left(\frac{\sqrt{\pi}}{2}\right)^n=\frac{A_n}{2^n}\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)r^{n-1}dr
  • \pi^{n/2}=A_n\Bigint_0^{\infty}\exp(-r^2)r^3dr・・・・(20)

ここで「ガンマ関数(4)」の式(18)(ここでは式の番号を振り直して式(21)とします)

  • \Bigint_0^{\infty}t^n\exp(-t^2)dt=\frac{1}{2}\Gamma\left(\frac{n+1}{2}\right)・・・・(21)

を用いれば

  • \pi^{n/2}=\frac{A_n}{2}\Gamma\left(\frac{n}{2}\right)

よって

  • A_n=\frac{2\pi^{n/2}}{\Gamma\left(\frac{n}{2}\right)}

となり、これを式(19)に代入して

  • S_n(r)=\frac{2\pi^{n/2}r^{n-1}}{\Gamma\left(\frac{n}{2}\right)}・・・・(22)

となります。