孟嘗君と戦国時代

この本は以前にも図書館から借りてきたのですが、その時はあまり理解出来ませんでした。どうもとっつきが悪かったです。先日、貝塚茂樹氏の「史記」を読んで面白かったので、その余勢を駆って再度この本を読んだところ何とか最後まで読めました。それでもこの本のほうが貝塚茂樹氏の「史記」よりも読みづらかったです。貝塚氏は学者なのにその本は読み易い。この本の著者は小説家なのにこの本は学術書みたいで読みづらい。正直なところ私はそう感じました。しかし何度も読み直してみるとだんだん著者の意図がみえてきて、この本もそれなりにおもしろくなってきました。


私が初めの頃ひっかかっていたのは、孟嘗君がちっとも登場しないからです。最初に少し名前が出ただけで、それから歴史をさかのぼった記述が始まり、斉の国は太公望が建てた国である、という話や、営丘がのちの臨淄(りんし)であれば話はかんたんだが、うんぬん、と、この話はどこで孟嘗君につながるのか、皆目分からなかったです。よく読めば、その前の章に「斉の孟嘗君」と書いてあるから孟嘗君は斉の人であるということが分かり、そこから斉の国の歴史の話につながっていたのでしたが、最初はそのことが分からなかったのでした。


「第二章、斉国と臨淄(りんし)」には孟嘗君は登場しません。「第三章 威王の時代」にも「第四章 斉の二大戦争」にも登場しません。「第五章 孟嘗君の誕生と父 靖郭君」の最後の節でやっと孟嘗君が誕生します。と思ったら「第六章 稷下のにぎわい」ではまた別の話になっています。結局、孟嘗君の話は「第七章 孟嘗君の活躍」と「第八章 孟嘗君と斉国の命運」で展開されます。この本は第八章で終わりです。全体の1/4しか孟嘗君は登場しません。孟嘗君のことを説明した本というのではなく、孟嘗君を座標軸にして、そこから戦国時代を述べてみた、という本だと理解しました。


よく読めば、戦国時代を知るのに重要な点は簡潔にではあるが押さえてあるようですので、もっと読みこなすべきなのでしょう。