Wikipediaのアパイアーの項には、以下のように書かれています。
女神ブリトマルティスとアパイアー女神
ブリトマルティスはアルテミスに庇護された乙女であり、アパイアーもまた、アルテミスに関係する森の女神であって、アイギーナの女神アパイアーが、クレータ島の女神ブリトマルティスと同一視され、更にアルテミス女神そのものとも同一視されていた。
アパイアーの名は、ギリシア語として見ると、「薄暗い、幽かな光の、陰鬱な」を意味する形容詞「パイオス、φαιος」の女性形に、否定の接頭辞「 -α 」が付いて形成されたものと理解でき、「薄暗さ」が否定されるとき、「かすかな明るさ」の意味となる。また、動詞「φαινομαι〜φαινω(光を齎す・出現する)」の否定動詞の分詞よりの派生形としての「アパネース(αφανης)」のヴァリエーションとして、「姿を消した者・乙女(aphaia)」という意味になる。アパイアー女神は、またラプリアー(Λαφρια)としても知られた。
アパイアー女神は、クレータでは「甘美な乙女」にして、しかしアイギーナでは「姿を消す女神」であり、アルテミスと同一視された通り、森の処女神で、男を殺戮する恐ろしい女神でもあった。
アポロン(左)とアルテミス(右)
「男を殺戮する恐ろしい女神」。上記には女神アパイアーの恐ろしい一面が書かれています。アパイアーはブリトマルティス(これも今まで聞いたことがなかった名前です)と関係が深そうなので、今度はWikipediaのブリトマルティスの項を調べました。
ブリトマルティス(甘美な乙女)は通り名であって女神の名前ではないし[6]、厄除けの婉曲法であって女神の性格も示していない[7]。ブリトマルティスと呼ばれる女神は、クレータ島でポトニア (Potnia)すなわち「女主人」のある面を表したものとして崇拝されていた。このクレータ島の女神の最古の側面は「山の母」であり、ミノア文明の印章 (en) にゴルゴーンのような悪魔的特徴を備えた姿で描かれていて、力の象徴として両刃の斧(ラブリュス)を身につけ、神聖なヘビをつかんでいた。この恐ろしい側面を「ブリトマルティス」すなわち「よき乙女」と婉曲法で呼ぶことで鎮め、和らげていた。
恐ろしい神々や事物に対してわざとやさしそうな名前をつける、というのは古代ギリシアによくあります。復讐の女神たちを「慈しみの女神たち」と呼んだり、波の荒い黒海のことをポントス・エウクセノス(客にやさしい海)と呼んだりしていました。この「甘美な乙女」も実はその名前とは正反対な性格なのでしょう。
ゴルゴーン
その恐ろしい面も気になりますが、私がもっと気になったのは「ポトニア」という言葉です。私は随分昔にこの言葉に出会っていました。(ミュケーナイ文書の中の「迷宮の女神」に書きました。)