ラビュリントイオ・ポトニア(迷宮の女主人)(11)
前回のエントリで、パーマー教授の、線文字AのA-sa-sa-raと読める単語が女神を表し、ヒッタイト語のイシャサラ(女主人)に近い単語である、そして線文字Aで書かれた言葉はルウィ語である、という説を紹介しましたが、線文字Aはいまだ解読されていません。解読したと主張する人は何名かいるようですが、その解読が広く学会に受け入れられていないようです。私は、サイラス・ゴードン教授の「古代文字の謎」
古代文字の謎―オリエント諸語の解読 (現代教養文庫 988)
- 作者: C.H.ゴードン,津村俊夫
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1979/02
- メディア: 文庫
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という一般向けの本を持っているのですが、ゴードン教授はこの本の中で、線文字Aは(ルウィ語ではなく)北西セム語に属する言語だ、と主張しています。私はこの本をおもしろく読みましたし、特に解読した文には「その都市が栄えるために」と書かれていた、というくだりは、この説が本当らしいという印象を私に与えました。私は専門知識がないので、専門家の説を聞くとすぐ信じてしまうのです。この本は古い本で原書は1968年発行なのですが、前回のエントリで紹介したチャドウィックの「線文字Bの解読 第2版」
- 作者: J.チャドウィック,John Chadwick,大城功
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1997/06
- メディア: 単行本
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古代近東の他の大言語族はセム語であった。セム語の有名な専門家、マサチューセッツのブランダイス大学のサイラス・ゴードン教授は、線文字Aをセム語と同一であると認めた。ここでもまたそれらしい成果が達成されたが、セム語とも類似はしばしば強くない。というのは、セム語では不変なのは子音にすぎぬからで、それ故にゴードンは、しばしば母音は重要でないとして捨てた。線文字Bから再構成されたという線文字Aの子音構造は、セム語の構造にはよく適合せぬために、曖昧さのもう一つ別の要素が導入され、厳密な照合を妨げている。ミノア人とペリシテ人の類似を申し立てて、言語学上の議論を支持しようとするゴードンの試みは、合理的な考古学的前提から出発しながら、いささか不合理な議論に彼をみちびいている。
ここでも私はすっかり迷宮の中に入り込んでしまいました。
ところで私は以前、このゴードン説を解説した文章をネット上に見つけて、それを和訳してアップしています(「『誰かがいつかミノア語の解読に成功するだろう。』 サイラス H. ゴードン(Cyrus H. Gordon)とミノア線文字A。グレイ A. レンズバーク(Gray A. Rendsburg)著」)。