勉強して分かったこと(2)
人間や他の動物の視覚系についてのいくつかのメモ書きです。
受容野
受容野についてのの説明はWikipediaにもありますが(ここ)、どうも私には分かりづらいです。ここでは、
- 作者: 合原一幸,神崎亮平
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の中で岡田真人氏が書かれた「第5章 視覚情報処理入門」の中の説明を引用します。
視野上のある場所を刺激すると、神経節細胞*1の活動が変化するとする。その視野上の領域を受容野とよぶ。受容野のある場所に、点刺激を提示する。このとき、スパイクの発火率が上昇すれば、その場所に+と書くことにする。反対にスパイクの発火率が低下した場合、-と書くことにする。このような実験手続きを経ると、受容野の構造を決定することが出来る。
さて、上記「視覚情報の流れ」で示した各細胞の受容野の様子を述べますと、網膜神経節細胞とLGNでは、受容野は同心円状になっていますが、V1の中で単純細胞と呼ばれるニューロンについては、その受容野が下図のような細長い形をしていて、つまりある傾きを持った線分に対して最も盛んに発火するようになっている、とのことです。なお、どの傾きをニューロンが好むのか、というのは個々のニューロンによって異なるということです。また、この単純細胞の受容野の反応特性はガボールフィルターという数学の式でよく近似出来ることが分かっています。
ガボールフィルターの値を濃淡で表した図。単純細胞の受容野はこのような構造をしている。
なお、ガボールフィルターの式は
というものであり、が単純細胞の出力を示し、が網膜上の位置を表します。また、は2次元のガウス分布で、座標の平均は0、座標の平均も0、座標の標準偏差も座標の標準偏差もであるような分布です。また、はある固定のベクトルで、はある定数です。
レチノトピー
甘利俊一氏の著書
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にある説明を引用します。
外界の事物は、網膜上では2次元の像として映る。一方、脳の皮質も2次元である。網膜のある場所の情報が、大脳皮質の視覚野のある場所に写されるときに、場所ごとに対応がとれている。
つまり、網膜と皮質との間に1対1の連続的な写像があって、場の2次元トポロジーを保存する。これを「レチノトピー」という。もちろん、脳内でこの対応がどこまでも続くわけではなく、層が高まるにつれて場所に関係しないより高次の情報が表現される。
レチトノピーがあるおかげで単純細胞は、距離が近い位置のLGNの出力から、ある方向の線分を検出することが出来るわけです。この点は、福島氏発明のパターン認識用のニューラルネットワークであるネオコグニトロンにうまく応用されています。
*1:この説明は神経節細胞に限らない