一年を終えるに当たって

 メドーンがアテーナイ王だった頃、既に「イーリアス」「オデュッセイア」で名声をはせていたホメーロスがアテーナイにやってきました。ホメーロスは自作の詩を朗誦しつつ諸国を遍歴していたのでしたが、この折はデルポイからアテーナイにやってきたのでした。そこでメドーン王はホメーロスを歓待しました。ある時市庁舎にいた折のことですが、その日は寒く庁舎の中で火が焚かれているのを見て、ホメーロスは即興で次のような詩を詠じました。

 子らは親の冠、国の砦、
 馬は野の、船は海の飾り、
 国民の集うさまは見るも楽し
 しかれども、クロノスの子が雪降らす冬の日に、赤々と
 火の燃ゆる館に勝るめでたき眺めなし。

神統記 (1984年) (岩波文庫)

神統記 (1984年) (岩波文庫)

この本に併収された「ホメロスヘロドトスの歌比べ」より

新しい年がよい年でありますように。