ロットサイズ
- Factory Physicsの法則(搬送バッチの構成)を前にご紹介をしましたが、これを半導体ファブ(=工場)に適用することを考えて見ます。半導体ファブに用語を合わせると、ジョブはウェハ、搬送バッチはロット、ということになります。
- ある装置がウェハを処理するキャパシティを2枚/分であるとします。ロットサイズが25枚とします。つまり1つのキャリアの中にウェハが25枚入っているとします。この装置のキャパシティは2枚/分なので、タクト時間(あるウェハの処理開始から次のウェハの処理開始までの間隔。キャパシティの逆数)は0.5分/枚になります。つまり30秒ごとに1枚ずつ、この装置にウェハが取り込まれていくことになります。よって、2番目のウェハは最初のウェハが取り出され始めてから0.5分後、3番目のウェハは1分後、キャリアの中の最後のウェハは、(25−1)枚*0.5分/枚=12分後になります。よってキャリア内のウェハの平均待ち時間は(0+12)/2=6分になります。
- 一方、最初にキャリアから出て行ったウェハは一番最初にキャリアに戻ってくるので、今度はこのウェハが他のウェハを待つことになります。先ほどと同様に考えて、最後のウェハがキャリアに戻るのは最初のウェハがキャリアに戻ってきてから24枚*0.5分/枚=12分後になります。よって、キャリアに戻ってからウェハが他のウェハを待つ時間の平均値は(12+0)/2=6分になります。よって、ウェハが装置での処理前に待つ時間と処理後に待つ時間を合計すると、平均12分待つことになります。
- ロットサイズを約半分の13枚に減らしたら、この待ち時間はどうなるでしょうか? 同様に考えて、平均待ち時間は12枚*0.5分/枚=6分に半減します。つまりロットサイズを半減することにより、キャリア内でのウェハ待ち時間が半減されることになります。
- Factory Physicsの定義(ステーション・サイクルタイム)を参照すると、
- サイクルタイム=搬送時間+キュー時間+セットアップ時間+処理時間+バッチ待ち時間+バッチ内待ち時間+部品待ち時間
- とあります。これを半導体ファブに置き換えると、上記のキャリア内待ち時間は、最初のキャリア内で処理を待つ時間がこの式のバッチ内待ち時間に、処理後にキャリア内で待つ時間がバッチ待ち時間に当たります。また、半導体ファブの場合、組立工程はありませんから部品待ち時間はありません。この式から、ロットサイズを短縮することによって、サイクルタイムを短縮することが分かります。
- しかし、ロットサイズを半減することにより、ロットを搬送する回数は2倍に増えます。そこで搬送システムの搬送キャパシティが心配になります。(上のサイクルタイムの式において、搬送時間が急激に増加したり、無限大になったりする、ということに当たります。)しかし、搬送キャパシティが充分にあるならば、(上の式における搬送時間があまり増加せず)このようにロットサイズを縮小することでサイクルタイムを短縮することが出来ます。ここから逆に、
- ロットサイズを決定しているのは搬送キャパシティ
- なのではないのか、と私は最近考え始めています。
議論の継続
ここでの議論は、以下の記事に続きます。
そして一応の結論は、以下の記事に書かれています。