ロットサイズと処理時間の変動係数の関係(その2)

26日のロットサイズと処理時間の変動係数の関係で確率的に処理時間が変動する場合をもっと包括的に議論します。これは、同一の確率分布を持つ独立な複数の確率変数の和の平均、標準偏差変動係数を求める問題になります。
同一の確率分布を持つn個の確率変数をX_1,X_2,....X_nとします。次に、これらの確率変数の和Sをすると

  • S=\Bigsum_{i=1}^{n}{X_i}

となります。Sの平均をE(S)で表わすと

  • E(S)=E(\Bigsum_{i=1}^{n}{X_i})=\Bigsum_{i=1}^{n}{E(X_i)}

しかし、X_iはすべて同一の平均値E(X)を持つので

  • E(S)=\Bigsum_{i=1}^{n}{E(X_i)}=\Bigsum_{i=1}^{n}{E(X)}=nE(X)

となります。次に和S標準偏差STD(S)

  • [tex:STD(S)=sqrt{E*1^2)}]

ここで

  • S-E(S)=\Bigsum_{i=1}^{n}{X_i}-nE(X)=\Bigsum_{i=1}^{n}(X_i-E(X))

よって

  • (S-E(S))^2=(\Bigsum_{i=1}^{n}(X_i-E(X)))^2=\Bigsum_{i=1}^{n}(X_i-E(X))^2-\Bigsum_{i=1}^{n}\Bigsum_{j=1,i\ne{j}}^{n}(X_i-E(X))(X_j-E(X))

よって

  • [tex:E*2^2)=E(\Bigsum_{i=1}^{n}(X_i-E(X))^2-\Bigsum_{i=1}^{n}\Bigsum_{j=1,i\ne{j}}^{n}(X_i-E(X))(X_j-E(X)))=\Bigsum_{i=1}^{n}E*3^2)-\Bigsum_{i=1}^{n}\Bigsum_{j=1,i\ne{j}}^{n}E*4(X_j-E(X))]

ここでi\ne{j}ならば(X_i-E(X))(X_j-E(X))は独立なので、

  • [tex:E*5(X_j-E(X))=E*6(E(X_j)-E(X))=(E(X)-E(X))(E(X)-E(X))=0]

よって

  • [tex:E*7^2)=\Bigsum_{i=1}^{n}E*8^2)=\Bigsum_{i=1}^{n}(STD(X_i))^2)=\Bigsum_{i=1}^{n}(STD(X))^2)=n(STD(X))^2)]

よって

  • [tex:STD(S)=sqrt{E*9^2)}=sqrt{n}STD(X)]

となることが分かります。
よってS変動係数C(S)で表わすと

  • C(S)=\frac{STD(S)}{E(S)}=\frac{sqrt{n}STD(X)}{nE(X)}=\frac{STD(X)}{sqrt{n}E(X)}=\frac{C(X)}{sqrt{n}}

よって、同一の確率分布を持つ独立なn個の確率変数の和の変動係数はもとの確率変数の変動係数\frac{1}{sqrt{n}}になります。各ウェハを処理する処理時間を同一の確率分布を持つ独立な確率変数と考えることが出来るならば、このことが
処理時間についても言えます。ここから逆に考えると、ロットサイズを\frac{1}{n}にした時の処理時間の変動係数c_esqrt{n}倍になることが分かります。
たとえばロットサイズを半分にすれば、処理時間の変動係数c_esqrt{2}=1.414倍になります。26日の[ロットサイズと処理時間の変動係数の関係:title=ロットサイズと処理時間の変動係数の関係]で述べた結果もそのようになっています。

議論の継続

ここでの議論は

に続きます。また、以下の一応の結論に利用されます。

*1:S-E(S

*2:S-E(S

*3:X_i-E(X

*4:X_i-E(X

*5:X_i-E(X

*6:X_i-E(X)))E((X_j-E(X)))=(E(X_i)-E(X

*7:S-E(S

*8:X_i-E(X

*9:S-E(S