ロットサイズと処理時間の変動係数の関係
25日の「「ザ・ゴール」でのバッチサイズ縮小の記述の検討」の最後で
と問いを発しましたが、ここではまず、装置処理時間の変動係数について検討します。
簡単な例を用いて考察します。ロットサイズ(=バッチサイズ)が1ウェハの場合と2ウェハの場合を考察するとします。また、1ウェハあたりの処理時間は1分か2分のどちらかであるとします。そして処理時間が1分である確率が50%、2分である確率が50%とします。
- この例は、次のように解釈することも出来ます。処理時間は1分であるが、故障が処理1回につき50%の確率で発生し、その故障が解消されるのに1分かかる、とします。そうすると、故障まで考慮して処理開始から完了までに時間を処理時間と考えると、50%の確率で1分、50%の確率で2分、となります。
ロットサイズを1ウェハとすると、1ロットあたりの処理時間とその発生頻度は、
- 1分 50%
- 2分 50%
となります。ここから、平均と標準偏差を計算すると
- 平均:1.5分
- 標準偏差:0.5分
となります。よって、この場合のロットの処理時間の変動係数は
- 変動係数:0.333
となります。次に、ロットサイズを2ウェハとした場合を考えます。このときの1ロットあたりの処理時間とその発生頻度は
- 1枚目のウェハが1分、2枚目のウェハも1分 で計2分 25%
- 1枚目のウェハが1分、2枚目のウェハが2分 で計3分 25%
- 1枚目のウェハが2分、2枚目のウェハが1分 で計3分 25%
- 1枚目のウェハが2分、2枚目のウェハも2分 で計4分 25%
となります。ここから、平均と標準偏差を計算すると
- 平均:3分
- 標準偏差:0.707分
となります。よって、この場合のロットの処理時間の変動係数は
- 変動係数:0.236
となります。つまり、ロットサイズが2から1に半分にすると、処理時間の変動係数は
- 0.333/0.236=1.414
1.414倍に増えることがわかります。よってロットサイズが小さいと処理時間の変動係数は増えることになります。ですから、この記事の最初に掲げた問いの答は「ノー」ということになります。
注意:変動が規則的な場合
ここで注意が必要です。上の考察では処理時間の変動は確率的であるとしました。しかし、もしその変動が周期的な場合であれば、処理時間の変動係数はロットサイズの半減に対して増加するか、等しいかのどちらかになります。
ケース1
処理時間が1分、2分、1分、2分・・・・と交互に発生する場合を考えます。この場合、ロットサイズを1ウェハとすると、1ロットあたりの処理時間とその発生頻度は、先ほどと同じで
- 1分 50%
- 2分 50%
となります。ここから、
と計算されます。次に、ロットサイズを2ウェハとした場合を考えます。このときの1ロットあたりの処理時間とその確率は
- 1枚目のウェハが1分、2枚目のウェハは2分 で計3分 100%
となります。ここから、
となります。つまり、ロットサイズが2から1に半分にすると、処理時間の変動係数は
- 0→0.333
に増えることがわかります。これは確率的に変動する場合よりも大きな増加です。この場合においても、この記事の最初に掲げた問いの答は「ノー」になります。
ケース2
処理時間が1分、1分、2分、2分、1分、1分、2分、2分・・・・と発生する場合を考えます。この場合、ロットサイズを1ウェハとすると、1ロットあたりの処理時間とその発生頻度はやはり、
- 1分 50%
- 2分 50%
となります。ここから、
と計算されます。次に、ロットサイズを2ウェハとした場合を考えます。このときの1ロットあたりの処理時間とその確率は
- 1枚目のウェハが1分、2枚目のウェハも1分 で計2分 50%
- 1枚目のウェハが2分、2枚目のウェハも2分 で計4分 50%
となります。ここから、
となります。つまり、ロットサイズが2から1に半分にしてもは変化しません。