半導体ファブ内での物流構成

今日の話は、半導体ファブをご存知の方には先刻ご承知のことがらばかりです。
半導体ファブでは加工される対象(材料)はウェハです。ウェハは円形をしております。この表面にLSI(=チップ)がいくつも形成されるわけです。

よって、ウェハの直径が大きいほうが一度に製造出来るLSIの数が多くなりますので、より大きいウェハが望まれます。大きなウェハを作る技術とそれを処理する技術の制約がありますので無制限に大きなウェハを用いることは出来ません。今、先端の半導体ファブで用いられているのは直径300mmのウェハです。私の理解しているのは300mmの半導体ファブ内の物流システムですので、以下はそれについて私の興味に即してご紹介します。
300mm半導体ファブでは、ウェハは直接、そのまま装置から装置に運ばれるのではなく、FOUP(Front Open Unified Pod)という容器の中に複数枚入れられて密封された状態で運ばれます。

ウェハを処理加工する装置やウェハのいろいろな特性を計る測定装置にはロードポートを呼ばれるFOUPの置き台が2〜4個ついています。このロードポートにのったFOUPのうち1つがフタを開けられ、その中のウェハが1枚ずつ取り出されて装置の中に取り込まれます(FOUPごと装置内に取り込む装置もありますが、ここでは考慮からはずします)。処理や測定が完了するとウェハは同じFOUPに戻ってきます(このような運用ルールを「Carrier Integrity」あるいは「ユニカセット」と呼んでいます)。原則としてFOUP内に入っているウェハはファブの最初の工程から最後まで同じグループでファブ内を進んでいきます。これをロットと呼んでいます。
半導体ファブ内には適当な場所にFOUPを収納するストッカ(=自動保管棚)が何台も何十台も設置されており、ストッカ間、ストッカと装置間は搬送システムで結ばれています。よって、装置での処理や測定を待つFOUPはその装置のロードポートが空いていればそのロードポートで待ち、ロードポートが空いていなければストッカで、ロードポートが空くのを待つ、ということになります。また、装置での処理や測定が終わったFOUPは、次の装置(群)の近くのストッカへ搬送システムによって運ばれます。これを模式的に書くと以下の図のようになります。

上の図は、通常の待ち行列理論で考えるモデル

と若干違っています。このような構成が通常の待ち行列の結論にどのような影響を与えるか、これから論じていきたいと思います。

につづきます。