スループットとサイクルタイムの関係 理想から現実へ。

理想的な場合のスループットとサイクルタイムの関係」で、理想的な場合のスループットサイクルタイムの関係を求めることが出来ました。これはあくまで理想的な場合であり、ロットは必ず一定間隔でラインに投入され、装置での処理時間もまた一定であるという条件の下での関係です。この時には、ロットに待ちが発生するのは、スループットが最大、つまりラインのキャパシティに等しい場合のみでした。
しかし、ロットの到着間隔や装置の処理時間に変動があるとこのようなわけにはいきません。スループットがラインのキャパシティより少ない場合、つまりラインにまだ余裕がある場合でもロットに待ちが発生します。その様子を、まずは一番簡単な1台の装置だけからなる1ステーションだけからなるラインについて見てみます。
理想的な場合のスループットとサイクルタイムの関係(1工程の場合)」に登場したのとよく似た下図に示すラインを考えます。

違いは到着間隔や処理時間が一定ではなく、変動があるところです。ここでは数値は「平均の」値でしかありません。もし、この変動がなければ、以前に示しましたように、

のようなガントチャートが得られ、ロットの待ちは発生しないことが見て取れます。しかし、たとえばロット1を処理している時の処理時間が20分延びて40分になってしまった、その代わりロット2とロット3の処理時間はともに10分短くなって10分になってしまった、という場合(つまり処理時間に変動がある場合)は、以下のようなガントチャートになります。

この場合、ロット2に10分の待ち時間が発生していることが分かります。この3ロットの平均処理時間は(40分+10分+10分)/3=20分 となり、平均処理時間20分という条件に合致しています。また、装置の利用率は6/9=66.7%であることも上のガントチャートから分かります。このラインのキャパシティは、この装置のキャパシティに等しく、それはこの装置の利用率が100%の時のスループットですから、上図の場合、スループットがラインのキャパシティより少ない場合でもロットの待ちが発生していることが分かります。また、処理時間が一定であってもロットの到着間隔に変動があると、たとえば下のガントチャートのようになり、やはりロットの待ちが発生します。

この場合も、やはりスループットは2ロット/hであることは上図から分かります。このようにロットの到着間隔や装置の処理時間に変動があると、スループットがラインのキャパシティより少ない場合でもロットの待ちが発生します。
では、この場合のスループットサイクルタイムの関係は、どのようなグラフになるのでしょうか? 残念ながら、このグラフはさまざまな条件によって変わりますし、その関係を正確に求めるのは困難なようです。そこで、大体の感じをつかむために、「待ち行列理論の利用」で考察を続けていきます。