待ち行列理論の利用

ラインから1ステーションを取り出して、そのステーションにおけるスループットサイクルタイムの関係を求めるためにFactory Physicsでは、

  • CT_q=\left(\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\right)\frac{u^{sqrt{2(m+1)}-1}}{m(1-u)}t_e
    • ただし
    • CT_q:キューでの待ち時間
    • c_aジョブ(=ロット)の到着間隔の変動係数
    • c_e:装置処理時間の変動係数
    • u:装置の利用率
    • m:装置台数
    • t_e:装置の実効平均処理時間

という式を提示しています。これについては「Kingmanの近似式とその拡張」と「故障と段取りの考慮」を参照して下さい。「Kingmanの近似式とその拡張」には基本を、「故障と段取りの考慮」には装置の故障と段取りをどのように考慮するかについてを、記述しました。
この式は、装置の利用率uと待ち時間CT_qの間の関係を与えますが、スループット利用率に比例すること、そして利用率が100%の時にスループットが最大になることを考えて、このステーションスループットTHステーションキャパシティTH_{max}で表せば、

  • TH=TH_{max}\times{u}

と書くことが出来ることがわかります。また、サイクルタイムCT=待ち時間CT_q+処理時間t_eですから、これらを元に、サイクルタイムCTスループットTHの間の関係を表す式を求めることが出来、それは以下のようになります。

  • CT=\left{\left(\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\right)\frac{(TH/TH_{max})^{sqrt{2(m+1)}-1}}{m(1-(TH/TH_{max}))}+1\right}t_e

これをもとにたとえば、

  • c_a=1
  • c_e=0
  • TH_{max}=12(ロット/h)
  • m=2
  • t_e=10(分)

の条件の場合のサイクルタイムCTスループットTHの間の関係を求めると、以下のようなグラフになります。

これを、ステーションが複数あるラインの場合に拡張する議論を、「現実的な場合のスループットとサイクルタイムの関係(1)」で示します。