いろいろな課題
昨日「サイクルタイム短縮のためには」を書いた時に、ここにはさまざまな問題が積み残しになっているなあ、と感じました。それを解決することは私には容易そうには見えないのですが、まずは、それをリストアップすることから始めようと思います。
ゴールドラットのTOCのDBR(ドラム・バッファ・ロープ)の原理をFactory Physicsの立場から理論付けること。
- Factory Physicsで活躍している(私が勝手に「Whittの近似式」と呼んでいる)式
- は、待ち行列理論に基づいていますが、その前提になっている仮定が現実の工場とは合わないような気がしております。これについては以前、コメント欄に少し書いたことがあります。http://d.hatena.ne.jp/CUSCUS/20070118#c1169126513
ロットの到着間隔分布が独立であるという待ち行列理論の仮定が、現実のラインとは合わない
M/M/の場合、ロットの到着間隔の分布は、独立であると仮定されています。つまり、ロット1がステーションに来て、その次にロット2が来て、その次にロット3が来たとして、ロット1とロット2の間隔とロット2とロット3の間隔は独立である、としています。ところが現実のファブではそのようなことはないのではないでしょうか? つまりボトルネックのところにあまり多くのWIPが溜まった場合、そのラインに新たにロットをラインへリリースするのを控えるのではないでしょうか? 人間はラインの状態を見てロットのラインへのリリースを調整するので・・・
- ここを解決しないとDBRの効果を理論付けすることが出来ないように思っています。
- 「ロット到着間隔のWIPへの影響の考察(1)」で考察を続けます。
そもそもボトルネック・ステーションがあちこちに移動する場合はどうするのか?
- ボトルネック・ステーションがあちこちに移動する場合、その原因が製品ミックスの変化によるものなのか、装置のダウンによるものなのか、原因の調査が必要だと思います。それから、製品ミックスの変化にしろ、装置のダウンにしろ、それらの変化の度合いとその頻度の関係を把握することが必要ではないか、と思います。そしてその変動を減らすことが出来るかどうか検討します。無責任と思われるかもしれませんが、あまりに変動の激しいラインはそれなりのパフォーマンスしか出せないと思います。それはまさにFactory Physicsにおける法則(変動)
- 変動の増加は常に製造システムのパフォーマンスを悪化させる。
- そのものだと思います。ただ、変動が製品ミックスの変動からくる場合APSを使って改善が出来るかもしれません。「ボトルネックのスケジューリングにはスケジューラを使え?」にそのことを少し書きました。
を減らすためにセットアップ回数を減らす、ということの、メリットとデメリット
- 単にセットアップ回数を減らすために、同じレシピ(=処理条件)のロットばかりを続けて処理し続けると、他のレシピを持つロットが待たされることになり、サイクルタイム短縮には逆効果のような気が直感的にします。さらに、このステーションをロットが繰り返し訪れるようなラウティングの場合、どの時点でレシピを切り替えるかの問題はさらに複雑になると思います。これについてFactory PhysicsもTOCも明確な回答を出していないように思います。ただゴールドラットの「チェンジ・ザ・ルール」を読むと、TOCでは、そこの部分はスケジューラに任せるのがよい、と考えているように読める記述があります。「ボトルネックのスケジューリングにはスケジューラを使え?」を参照して下さい。