ロット到着間隔のWIPへの影響の考察(2)

ロット到着間隔のWIPへの影響の考察(1)」で述べた仮定

2時間の間には必ず12ロットが到着する性質を持つとします。

という仮定は、どうもしっくり来なかったので、代案をいろいろ考えてみました。ここで述べた例ではロットの到着は平均10分に1個で、装置の処理時間に等しく設定してあります。平均10分に1個ということは1時間に平均6個到着ということです。今、処理のことは考えずに、ロットの到着だけに注目して以下のようなグラフを考えます。

このグラフでは、横軸に時間(分)を縦軸にロット到着数の累計をとっています。もし必ず10分にステーションに1ロット到着するのであれば、上のグラフの「ノルマ」と記した線のように直線になります。これに対して現実は、きっかり10分毎に1ロットが到着するということはなく変動するので、例えば、上のグラフの「実際」と記した線のようになると思います。このグラフでは、最初の1ロットが50分間、来なかったのですが、その後、前工程ががんばってノルマ(青線)からの遅れを挽回した、というストーリーになっています。その後も、125分のところで、その次のロットが155分まで来なかったりと、遅れが何度か発生しますが、その後も挽回が行われる、というストーリーです。今まで明記してこなかったのですが、このステーションボトルネック・ステーションであると想定しています。それは、この考察の元々の目的が

ゴールドラットTOCのDBR(ドラム・バッファ・ロープ)の原理をFactory Physicsの立場から理論付けること。

であったからです。そうすると前工程は利用率が100%より少なく、余裕があるので、このような挽回が可能なはずです。
私は現実の工場ではこのようなロット到着になるのではないか、と考えています。この特徴をどう表すかですが、

  • 累積到着ロット数の「ノルマ」と「現実」の差が、ある一定数を越えない

ということだと思います。上のグラフの例では4個を越えていません。このような場合、時間0の時点でステーションが5ロットのWIPを持っておれば(5ロットの到着が時間0の時点ですでにあったとすれば)、「実際」の累積到着数推移のグラフは以下のようになります。

今度はステーションでの処理開始を考察します。このステーションが正確に10分の間隔で1ロットを処理すると仮定します。そして、上のグラフに、処理開始の累計数の線を追加します。すると下のグラフになります。

ここで、ある時刻が与えられたとして、その時刻における「到着」と「処理開始」の累計数の差が、その時刻におけるステーションWIPになることに注意して下さい。
このグラフではどの時刻においても「到着」の線が「処理開始」の線の上を行っているので、このステーションでは常にWIPが存在するということになります。常にWIPが存在するということは、このステーションは常に稼働中である、ということになります。つまり利用率が100%です。そしてWIPの平均値はあきらかに無限大より少ないです。この議論は「ロット到着間隔のWIPへの影響の考察(3)」につづきます。また、時間0の時のWIPをもっと少なくした場合にどうなるかについては「ロット到着間隔のWIPへの影響の考察(4)」で述べます。