Factory Physicsの観点からTOCのDBRを理論付け出来たか?
「ロット到着間隔のWIPへの影響の考察(2)」から「ロット到着間隔のWIPへの影響の考察(6)」までの考察のまとめを述べます。
- Kingmanの近似式の前提には「到着間隔分布が互いに独立な同一確率分布である」という前提がある、と「推測される。」(私の力不足で「前提がある」と断言するまでには至っていません。
- 現実のラインでは、上記の前提が成り立たない。
- そのため、ボトルネック・ステーションの利用率がの時、Kingmanの近似式ではWIPが無限大になるが、現実のラインでは、有限のWIPでボトルネック・ステーションをにすることは可能である。
こうやって書き出すと、目標としていた
- ゴールドラットのTOCのDBR(ドラム・バッファ・ロープ)の原理をFactory Physicsの立場から理論付けること。
にはほど遠いと感じました。今回、考察してみて、到着間隔分布の独立性という仮定に問題がありそうであることが分かったのが収穫でした。そして、DBRはおそらく、「ノルマ」より「実際」が少なくなった時に、がんばって「ノルマ」に近づける「努力」の一種であり、それによって、必要とするWIPを減らしているのだろう、と感じました。感じることはいろいろあるのですが、どうも理論的にすっきり記述出来ません。Factory Physicsの本で、TOCの話があまり出てこなかった理由のひとつは、DBRを待ち行列理論で説明することの困難さにあったのかもしれない、と思いました。
さて、ここから派生する問題があります。上記のまとめから導き出される疑問ですが、「Kingmanの近似式は利用する価値があるのか?」ということです。私は今のところ、は1より適度に小さければ、使えるのではないか、と思っています。しかし、それを根拠づけるものが今のところ私にはありません。