ロードポートネック

装置と搬送システムの相互作用」で説明したTLTUを導入した待ち行列の挙動で特徴的なのは、ロードポートのネックが起こり得る、ということです。これはこのモデルに到着するロットが十分にあっても装置の利用率が100%にならない、という現象です。これについて述べます。説明を簡単にするために、

  • TL:装置ロードポートが空いて、かつ、ストッカにすでにロットがあった場合の、ロットがその装置ロードポートに到着するまでの時間
  • TU:ロットの処理が完了してから、ロット(=FOUP)がロードポートから取り外されるまでの時間
  • t_e:装置の処理時間

が全て定数であるとします。また、装置でのロットの処理時間にオーバーラップがない(「待ち行列の考察における装置モデルの改善」を参照のこと)とします。ひとつのロードポートに注目して、その状態の変化を横軸に時間軸をとって書くと次のようになります。

この変化は、ずっと繰り返されます。上の図の各状態の意味は以下のとおりです。

  • te:そのロードポート上のFOUPが処理中
  • TU:そのロードポート上のFOUPを取り除きつつある。
  • ロット待ち:ストッカ内に、次に処理すべきロットがなかったので、次に処理すべきロットがストッカ発生するのを待っている。
  • TL:FOUPをストッカからロードポートに運んでいるところ
  • 待ち:ロードポート上でFOUPが、処理されるのを待っている。

さて、なるべく装置の利用率を100%にしたい、と考えるとします。そのために、ストッカ内部には必ず、次に処理すべきロットが必ず存在する、という仮定を置きます。すると、上図における「ロット待ち」はなくなることになり、下図のようになります。

この装置にはロードポートが2つある、とします。すると、「次に処理すべきロットがストッカ内部に必ず存在する」「装置でのロットの処理時間にオーバーラップがない」という仮定のもとでの、2つのロードポートの状態は以下の図のようになります。

処理状態(te)が絶え間なく続いていて、装置の利用率が100%であることが図から読み取れます。
ところが、もしTLがもっと長かったらどうなるでしょうか? たとえば、以下の図のようになってしまいます。

ここで起きている事はなんでしょうか? 装置の利用率が100%になっていません。ロットの処理が終わって、そのロットを処理前の新しいロットと交換している最中に、もう一方のロードポートでの処理が終了してしまったのです。このような、ストッカには処理すべきロットが十分にあるのに、装置の利用率が100%にならない現象を、

  • ロードポートネック

と呼ぶことにします。これは通常の待ち行列モデルでは発生しない現象です。