搬送時間が変動する場合への定理の拡張を試みて
「搬送時間が変動する場合のロードポートネック」では、の実現値のいずれかが
を満たすならば、ロードポートネックになる、と結論しました。それでは、逆にの全ての実現値が
ならばロードポートネックにならない、ということになります。の最大値をで表すならば、
- ・・・(1)
ならばロードポートネックにならない、と表すことが出来ます。このことを踏まえて、「搬送時間ありG/D/1のサイクルタイム定理。CETとTUとTLは一定 の場合」で述べた定理
の中の条件
もしならば
を
- もしならば
と置き換え、さらに、は変動するので
を
-
- ただしはの平均値、はの平均値
と置き換えればよいように推測されます。しかし、搬送時間が変動する場合には、たとえ
であっても
であるとは言えません。これについては簡単な反例を示すことが出来ます。
今、搬送時間のないモデルで、下の図のようなガントチャートを考えます。この例では、ロット2はロット1の処理が終了して1分後に到着します。また、=5分、=2とします。
この2つのロットにはまったく待ち時間がないので、このモデルでのロットの平均サイクルタイムは5分になります。次に上とまったく同じロット到着時刻を持つ、搬送時間のあるモデルを考えます。ただしTLは変動するのでロット1のTL(これをと表すことにします)は3分、ロット2のTL(つまり)は1分であるとします。(よって平均2分) またTUはロット1、2ともにゼロであるとします。またとします。するとの実現値は1分と3分なので、
は成り立っています。このように条件を定めた場合、ガントチャートは下図のようになります。
ここでは、ロット2には待ち時間1分が追加されることになり、平均のロットサイクルタイムは7.5分になります。一方、、つまり図1でのサイクルタイムは5分、=0分、=2分。よって、5分+0分+2分=7分。よって
は成り立っていません。
では何が言えるのか?
それについては「【定理10】」からの考察で追求します。そしてその結論を「搬送時間ありG/D/1のサイクルタイム定理」に示します。