神道の逆襲

神道の逆襲 (講談社現代新書)

神道の逆襲 (講談社現代新書)

私にとってこの本は、山本ひろ子氏の中世神話を読んで以来の神道に関する収穫だった本です。日本の神道思想の変遷の概説書としても分かりやすく記述されていてとても役に立ちますが、それ以上の何かを感じます。それが何なのか私は明確に言うことが出来ませんが、対象を扱うある種の真剣さ、というものが、この本から伝わってきます。(これは中世神話を読んでいても感じます)
各章のタイトルは以下のようになっています。

第一章 神さまがやって来た
第二章 神道教説の発生
第三章 神国日本
第四章 正直の頭に神やどる
第五章 我祭る、ゆえに我あり
第六章 神儒一致の神道
第七章 神道の宗源は土金にあり
第八章 危ない私と日本
第九章 人はなぜ泣くのか
第十章 魂の行方
結び  神さまの現在

タイトルを見てもそれだけでは内容が推察されないかと思って、私なりの補足を以下に示します。
第一章 神さまがやってきた

  • は、神さまはお客様、というテーゼをかかげて、日常の世界から日本の神々の世界に読者を導き入れます。

第二章 神道教説の発生

第三章 神国日本

  • は、タイトルからだけですと、戦争中の自国優越主義を連想しがちですが、「神国」の元もとの意味はそうではないことを述べます。ここで叙述されているのは北畠親房の思想です。

第四章 正直の頭に神やどる

  • は、第二章、第三章の歴史的な叙述から少し離れ、神道でいう「正直」ということの考察です。ここには花咲爺さんとシロの話が登場します。

第五章 我祭る、ゆえに我あり

第六章 神儒一致の神道

第七章 神道の宗源は土金にあり

  • は前章に続き、垂加神道の教説の説明です。

第八章 危ない私と日本

第九章 人はなぜ泣くのか

第十章 魂の行方

結び  神さまの現在

  • は再び現在に戻ってきて日本の神々のありようを論じています。

随所にハッとする記述がなされていてとても面白いと思いました。例えば、死後の世界の有無について尋ねられた時の本居宣長の言葉が「神道に安心というふことなし」だったそうで、それは死後のことは分からない、という意味だそうです。それを言っては宗教としては成り立たないのに、よくそんな答をしたものだ(そこまで「まこと」を貫いたのだ)と、と感心しました。
私の好きな本の一つです。