【定理12a】

補足説明

以下は、「搬送時間ありG/G/1のサイクルタイム定理」で述べた定理の証明の一部です。証明は、「【定理10a】」から始まっています。

【定理12a】

各ロットのガントチャートにおいて、TLの部分を先頭に移動させ、ロットiについて、そのTLの終了時刻、すなわちA_i+TL_iを新しいロット到着時刻A'_iと定義し、ガントチャートから搬送時間TLとTUを除く、という操作をして新たなガントチャートを導き出す。これをガントチャートを変換する、と呼ぶことにする。
もし、全てのpについて

  • CET_{max}\le{\Bigsum_{j=p}^{p+LP-2}{t_{ej}}}

ならば、変換後のガントチャートは、

  • (1)同時に2ロット以上が処理中になることはない。
  • (2)待ちロットが1ロット以上あるのに装置が空いていることはない。

今回の定理では、新たなロット到着時刻A'_iを与えられた「搬送時間のない」モデルを考えています。ですから、待ちロットが存在する、というのはストッカに存在するのではなく、すぐ装置で処理可能な位置で存在する、ということです。よって、装置が空いていて、待ちロットが存在するのであれば、そのロットはすぐに処理を開始することになります。これが(2)の意味するところです。
証明に移る前に、例を用いて上記の変換の内容を示します。搬送時間のあるG/D/1のモデルのガントチャートの例として図1を示します。

  • 図1

この例ではLP=2CET=TU+TLとします。TUは変動を持ちませんがTLは変動を持ちますのでCETも変動を持ちます。また、図中の「Stk」はストッカでの待ちを、「Lp」はロードポートでの待ちを表します。この図の個々のロットについてTLを先頭に移動させると以下のようになります。

  • 図2

ここからTLとTUを除くと、以下のようになります。

  • 図3

このようにして図1を変換して図3のガントチャートを得ることが出来ました。このガントチャートは同時に2ロット以上が処理中になることはないですし、待ちロットが1ロット以上あるのに装置が空いていることはありません。
(証明)

  • 上記の(1)については、上記の変換は、ロットの処理開始時刻と処理終了時刻をまったく変えていないので、ロットの処理中の部分について変換前のガントチャートとまったく同じである。前のガントチャートで、同時に2ロット以上が処理中になることはあり得ないから、変更後のガントチャートでも同時に2ロット以上が処理中になることはあり得ない。よって(1)が成り立つことは明らかである。
  • (2)については、変換前にTLがそのロットのガントチャートの先頭にもともとあったか、なかったか、で場合分けをして考える。
  • もともとTLが先頭にあった場合
    • この場合はロットのガントチャートは変化していない。よって、変換後のガントチャートで待ち状態である時刻には、変換前のガントチャートでも待ち状態である。そして変換前のガントチャートで待ち状態になっている場合は必ず装置が他のロットを処理中であるが、装置が処理中である時間帯も変換前後で変わっていないので、変換後のガントチャートでも、このロットが待ち状態である時に装置が空いていることはありえない。
  • 変換前にはTLが先頭になかった場合
    • そのロットをロットiとすると、定理10aからS_i=E_{i-1}である。よって、処理開始の前にロットi-1が処理中であったのは明らかである。
  • よってどちらの場合も待ち状態の時に装置が空いていることはあり得ないことが明らかである。よって(2)が成立する。

(証明終わり)

議論の継続

この【定理12a】は「搬送時間ありG/G/1のサイクルタイム定理(再掲)」で使用されます。