専用バッファと共用バッファの組合せ
サイクルタイム定理のさらなる拡張を試みてでの考察を続けます。問題とするのは、
です。
ロードポートのある場合の待ち行列を解析するにはロードポートの位置は重要ではありませんから、これを無視して考えます。すると下図のようになります。
つまり各装置の前にLP−1個の、その装置専用のバッファ(待ち場所)があり、それとは別にキャパシティ無限の共用バッファがあるという構造です。これに対して通常のG/G/m待ち行列は、
のようになります。LP=1の時は上のモデルは下のモデルに一致します。よってこの時は、Whittの近似式を用いてサイクルタイムを求めることが出来ます。(しかし搬送時間を無視出来ない場合は、LP=1だと常にロードポートネックになるのでWhittの近似式ではうまく近似出来ません。)まずは、LP=無限大の時にどうなるかについて考えてみようと思います。LP=無限大になれば共用バッファを使用することはなく、個々の装置はそれぞれG/G/1の待ち行列であると考えることが出来そうです。しかし一般のG/Gは難しいので、まずM/M/mとM/M/1を比べてみます。
上記の2つの場合で、全体としてのスループットが同じであれば、個々の装置の利用率も同じになります。そこで同じ利用率での両者のサイクルタイムを調べて見ます。利用率とサイクルタイムの関係は
-
- ここにはm台の装置が全て空いている確率を表し、
となります。m=1の時、m=2の時、m=4の時のこれらの関係をグラフに示すと、以下のようになります。(ここではとしました。)
ここから、次のような考察を得ることが出来ます。
- 4台の装置からなるステーションの場合、ロットの到着間隔と装置の処理時間がともに指数分布であれば、LP=1のときはm=4の曲線に示すようなサイクルタイムの特性であったのが、LPが大きくなるにつれてm=1の曲線に近づく。
しかし本当にこれは正しいのでしょうか? 私にはまだ疑問が残っています。そのわけを「キャパシティ無限大のロードポートを持つシステムがM/M/1とみなされない訳」で述べます。