以下のたわごとをお許し下さい。
* *
アウグストゥスがローマの平和を確立した時代であっても、さまざまな悲惨な出来事はあっただろうし、一般の人々には不公平も理不尽なこともあっただろう。それにもかかわらず、やはり巨視的には平和は存在しており、私はPax Romanaという言葉を、うつくしい、と思う。
そしてそれを確立するための努力には、さまざまな嘘も含まれていただろうが、それでもその努力を尊いものに思う。それは社会の既得権者に有利な、保守的な考えなのかもしれないが・・・
* *
「しかし汝ローマ人、ひろく諸族を統治して、平和を与え法を布(し)くことこそ汝の他に秀(す)ぐるわざ」(泉井久之助訳)
とウェルギリウスはアエネイスで歌った。
* *
塩野七生さんの「ローマ人の物語」の第6巻「パクス・ロマーナ」に登場する、アウグストゥス61歳の時の逸話
「カエサル・アウグストゥスよ、われわれ全員からの、あなたとあなたの家族への、幸多かれという願いの気持ちを伝えたい。なぜならそれこそが、われらが国家とその首都ローマの平和の保障でもあるからだ。
元老院は国民の合意を得て、ここであなたに、『国家の父(パーテル・パトリアエ)』の称号を贈ることとする」
起立した元老院議員全員からの、「国父カエサル・アウグストゥス!」の合唱がこれにつづいた。
* *
そうでありながら、のちに「クィンクティリ・ワルス! 私の軍団を返せ!」と嘆く
時の彼を想像する。