錬金術 セルジュ・ユタン

錬金術 (文庫クセジュ)

錬金術 (文庫クセジュ)

錬金術」という言葉は随分古くから私の精神につきまとっていた言葉です。最初は高校生の頃、シュルレアリスムに「ハマっていた」ので、その関係から錬金術という言葉を知りました。しかし、その実体を知っているわけではありませんでした。次に大学生になってカール・グスタフユングの「心理学と錬金術」に出会い、そこに登場する異様なイメージ(太陽と月が一緒に風呂に入る、といったような)の銅版画の数々を知るようになりました。それから、フランセス・イエイツの「薔薇十字の覚醒」からは、それらの銅版画を別の視点(政治的、イデオロギー的視点)から読めることを学びました。しかし、錬金術そのものを簡潔に説明した本になかなか出会わずにいたところ、出会ったのが本書です。
著者の本書を執筆する姿勢は、「訳者あとがき」にある次の記述から察することが出来ると思います。

 著者セルジュ・ユタンは1929年パリに生まれ、ソルボンヌで哲学を専攻したのち、各種神秘学関係の研究に没頭してきた。(中略)
 「神秘を否定するよりは研究するほうがいいのではあるまいか」と著者は自分の経歴書の中でひかえめに語っている。本書も、錬金術の歴史と理論と実際をめぐる客観的な概説書であり、その文章の調子はできるだけ押さえられているように見受けられる。だが、少年時代から謎に驚き不思議を愛したという著者の心情は、慎重で行き届いた記述の仕方そのものの中に読み取れるであろう。

私はこれを書きながら、ともすれば、冷静さを捨てて、連想のおもむくままに書きたい気持ちが沸いてきます。エジプト神話のオシリスとイシスのこと、ヘルメス文書の1つ「ポイマンドレース」の伝える世界創造神話ユングの「心理学と錬金術」に概要が示されていた錬金術神話「タブリティウスとベア」のこと、クリスチャン・ローゼンクロイツの「化学の結婚」のこと・・・・。
ここでは、ひとつだけ書きます。

最高の知は無知である。
友愛団員クリスチャン・ローゼンクロイツ
黄金の石の騎士
1459年
(「化学の結婚」より)