ブルゴーニュ家
- 作者: 堀越孝一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/07/16
- メディア: 新書
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しかし、その記述の仕方が、読者に媚びていないというか、ひとくせもふたくせもあります。例えば、各章のタイトルはまだ普通なのですが、その下の節のタイトルになると、何とも思わせぶりです。以下は、第1章のタイトルとその下にある節のタイトルです。
- 1 ガンの祭壇画
- 神秘の子羊の礼拝が主画題のはずなのが、なにしろ聖処女マリアの画像が強すぎる
- ナザレのヨセフのいいなずけのマリアが、窓辺に立って外の景色を眺める
- ブルゴーニュ候おひとよしのフィリップの影が画面に落ちる
- 町の助役が絵を寄進した
- 画家はおひとよしの妻イザベルも絵に描いている
- 画家ははじめリエージュの君主のお抱えだった
- 時のリエージュの君主はヨーハンといって、リエージュの市民団と対立していた
- ブルゴーニュ家の代替わり おそれしらずのジャンの登場
- オルレアン家のルイが、なんでまたルクセンブルク候になっていたのか
- アヴィニョンの法王は月の法王
- リエージュ、風雲急を告げる
- ブルゴーニュ家がリエージュ司教領を包囲する
ヨーロッパ中世の複雑な家と家との結びつき、さまざまな称号とそれが指示する権利の範囲、名目と実際の乖離、そういったものを感じさせます。そういう、現代を生きていくにはどうでもよい事柄(トリビア?)に私は惹かれます。この本の前書きも少し紹介します。そこから、この本の記述の仕方を感じていただけたら、と思います。
はじめに
ブルゴーニュといえばセーヌ川とその支流ヨンヌ川の上流の山地からソーヌ川の流域におりる土地と、まずたいていのフランス人は説明するだろう。パリから見て案内するには、これが一番わかりやすい。地質学の方でも、パリ盆地の流れがモルヴァン山地とジュラ山脈にはさまれる「スイ・ド・ブルゴーニュ」と、「スイ」は地質学の方ではなんというのか、ふつうに意味をとれば、まあ「敷居」で、ブルゴーニュを敷居に見立てている。その南はローヌ盆地で、地中海の方からいけばローヌ盆地から「ブルゴーニュ敷居」をまたいでパリ盆地にはいる。
また、最初の「ガン(ベルギーの地名ヘントのフランス語読み)の祭壇画」をはじめとしてこの本にはいくつも当時の絵画(いわゆる西洋美術で登場するたぐい)が登場するので、この著者と一緒にヨーロッパの美術館に行ったら、その博学を聞けて楽しいだろうな、と想像しました。
と言いながら実をいうと、私はこの本を通して読んだことがありません。内容が複雑で、どうしても読み通せないのです。しかし興味がないわけではなく、私にとっては何度も挑戦するであろう本です。
- 余談ですが、どなたか(中世)「ルクセンブルク家」という本を書いて頂けないでしょうか?