ハプスブルクをつくった男

ハプスブルクをつくった男 (講談社現代新書)

ハプスブルクをつくった男 (講談社現代新書)

同じ著者による「戦うハプスブルク家」(07/02/28の日記参照)に感心したのでこれを買いました。私にとってこの本の価値は、神聖ローマ帝国皇帝「カール4世」について詳しく書かれた、日本語の一般向けの本でほとんど唯一の本であるということです。そのことが私がこの本を読む際の邪魔にもなっています。つまり、主人公であるハプスブルク家のルドルフよりもルクセンブルク家のカール4世のほうにどうしても関心がいってしまうのです。
ハプスブルクを作った男ルドルフ(建設公)は、本書の表紙に書かれた文言で

時の皇帝を相手に大芝居を打ち、ハプスブルク帝国の基礎をわずか七年で築きあげた「建設公」ルドルフの激烈な生涯

と紹介されているように、1358年19歳でオーストリア公となったルドルフは7年後の1365年25歳で生涯を閉じます。しかしその間にルドルフは、オーストリア領内に絶対主義的政策を推し進め、ウィーンにシュテファン大聖堂とウィーン大学を建設し、チロル領を横取りし、偽書を作成して自家の特権を捏造し、のちのハプスブルク家が実現したようなボヘミアハンガリーとの同君連合を画策します。何か信長を思わせるものがあります。
この本で初めて知った事実がいっぱいあります。例えばこの時代の少し前まではブランデンブルク辺境伯領はヴィッテルスバッハ家の領土だったこと、それをカール4世が買い取り、後の時代にホーエンツォレルン家に与えられること、などです。ただ私はどうしてもルクセンブルク家のカール4世のほうに目がいってしまうのです。日本での「ハプスブルク家もの」の人気に比べてルクセンブルク家は不当に軽視されているような気がします。