このついで


明日はこの寺から帰ろうという日の夕方のこと、風が大変荒く吹いて木の葉がほろほろと音羽の滝の方へ散っていき、色の濃い紅葉などが、この局(つぼね)の前に隙間なく落ちて敷き詰めたようになっているのを、あちらの方とのしきりになっている屏風のそばに寄って私は眺めておりました(きっとあちらの方も眺めておられたことでしょうが)。するととても小さな声で


いとふ身はつれなきものを
 憂きこともあらしに散れる木の葉なりけり


私は風の前の・・・」

と独り言のように言うのが聞こえてきて、ほんとうにしみじみと感じましたが、さて、どう答えたらよいものかと・・・


(「堤中納言物語」の「このついで」から。現代語訳はCUSCUS)