M/M/1における待ち時間の式の導出(3)

ここでは、M/G/1待ち行列での考察をなぞる方法を紹介します。
ロットが到着した時に装置が他のロットを処理中かどうかということを考えます。到着間隔が指数分布、つまりデタラメに到着する、ということから、ロットが到着した時に装置が処理中である確率はそもそも利用率uになることが分かります。

  • このあたりの議論は厳密にはPASTAという概念の議論になります。PASTAとはPoisson Arrival See Time Averageの略でポアソン到着(到着間隔が指数分布の到着)は(いろいろな現象の)時間平均を見るだろう、ということです。PASTAについてはここでは詳しく述べません。

さらに、到着した時に待ち行列で待っているロットの個数の平均値はこれもPASTAにより待ち行列の(時間)平均の長さL_qになります。また、装置が処理中の時の処理の残り時間はもちろん確率変数ですが、処理時間が指数分布(M)の確率変数であることから残り時間の平均値は処理時間の平均値t_eに等しいことが分かります。よって、このロットが待ち行列で待つ時間の平均値は、今、装置が処理中であるならば、

  • (装置が処理中である場合の待ち行列の平均の長さ)×t_et_e

であり、今、装置が空いているならば

  • ゼロ

です。装置が処理中である確率はuですから、ロットが待ち行列で待つ時間の平均CT_q

  • u×(装置が処理中である場合の待ち行列の平均の長さ)×t_eut_e

となります。

  • u×(装置が処理中である場合の待ち行列の平均の長さ)

  • (装置が処理中である確率)×(装置が処理中である場合の待ち行列の平均の長さ)+(装置が処理中でない確率)×0

ここで装置が処理中でない場合は、待ち行列の長さはゼロであることを考慮すれば、上の式はさらに

  • (装置が処理中である確率)×(装置が処理中である場合の待ち行列の平均の長さ)+(装置が処理中でない確率)×(装置が処理中でない場合の待ち行列の平均の長さ)

と書けることになり、よってこれは待ち行列の平均の長さL_qにほかならないことになります。よって、ロットが待ち行列で待つ時間の平均CT_q

  • CT_q=L_qt_e+ut_e・・・・・・(1)

と書けます。ここでL_qに対してリトルの法則を適用します。ロットの到着するスループットTHとすると

  • L_q=THCT_q

になります。スループットTHはロットの平均到着間隔の逆数であり、ロットの平均到着間隔は

  • \frac{t_e}{u}

ですので

  • TH=\frac{u}{t_e}

よって

  • L_q=\frac{uCT_q}{t_e}

これを式(1)に代入すると

  • CT_q=uCT_q+ut_e

よって

  • (1-u)CT_qt=ut_e
  • CT_q=\frac{u}{1-u}t_e・・・・・・(2)

これでM/M/1待ち行列の待ち時間の式を導出することが出来ました。