M/1一般ネットワークの場合の積形式解存在の証明

先行エントリ:もう少し複雑な待ち行列ネットワークの解析(3)


ここでは一般的なネットワークを考えます。ステーションの数をNとします。ただし、各ステーションは1台の装置から成り、装置の処理時間は指数分布であるとします。ネットワークの外からは一般的にどのステーションへもロットが到着する可能性があるし、ネットワークの外へは一般的にどのステーションからもロットが出て行く可能性があるとします。外から各ステーションへのロットの到着の時刻の間隔は指数分布であるとします。


ステーションを区別するために1から順番に番号をつけていきます。i番目のステーションスループット\theta_iで表します。また、i番目のステーションに外から入ってくるスループット\lambda_iで表します。ステーションiを終えたロットがステーションjに進む確率をr_{ij}で表します。そうすると、ステーションjに入ってくる量\theta_j

  • \theta_j=\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^N\theta_ir_{ij}・・・・・・(1)

で表すことが出来ます。式(1)は\thetaについての連立一次方程式になっています。これが\thetaについて解けると仮定します。(どういう場合に解けるかは、私にとって今後の宿題です。) これを

  • \theta_j=f_j(\vec~\lambda,R)・・・・・・(2)

と表わすことにします。ただし\vec~\lambda(\lambda_1,\lambda_2,....\lambda_N)を簡略的に表わしたものであり、R(r_{ij})を簡略的に表わしたものとします。
さてaを任意の定数として、式(1)で

  • \theta_ia\theta_i
  • \lambda_ia\lambda_i

で置き換えると、やはり式(1)が成り立つので式(2)について

  • f_j(a\vec~\lambda,R)=af_j(\vec~\lambda,R)・・・・・・(3)

が成り立つことが分かります。一方、定義から

  • \theta_j=\frac{u_j}{t_{ej}}・・・・・・(4)

です。式(4)を変形して

  • \frac{1}{t_{ej}}=\frac{\theta_j}{u_j}・・・・・・(5)

状態(k,m,n,r,.....)\vec~kと略記することにします。また、状態\vec~kから、j番目のステーションのロット数だけを+1した状態を\vec~k(+j)で表すことにします。そして、状態\vec~kと、状態\vec~kN個の要素の内どれかひとつの要素だけを+1した状態\vec~k(+j)の間の遷移の間に平衡が成立すると仮定します。そのようにすると局所平衡方程式は、

  • p(\vec~k(+j))\frac{1}{t_{ej}}=p(\vec~k)\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^Np(\vec~k(+i))\frac{1}{t_{ei}}r_{ij}・・・・・・(6)

という形になります。式(6)の局所平衡方程式が成り立てば大域平衡方程式が成り立ちます。式(5)を式(6)に代入して

  • p(\vec~k(+j))\frac{\theta_j}{u_j}=p(\vec~k)\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^Np(\vec~k(+i))\frac{\theta_i}{u_i}r_{ij}・・・・・・(7)

式(7)を式(1)と比較すると、(1)で

  • \theta_j{\rightar}p(\vec~k(+j))\frac{\theta_j}{u_j}
  • \lambda_j{\rightar}p(\vec~k)\lambda_j

と置き換えると(7)になることが分かるので、式(2)のf_j()を用いれば、式(7)は

  • p(\vec~k(+j))\frac{\theta_j}{u_j}=f_j(p(\vec~k)\vec~\lambda,R)・・・・・・(8)

という形に解けるはずです。式(8)の右辺は式(3)を用いて

  • f_j(p(\vec~k)\vec~\lambda,R)=p(\vec~k)f_j(\vec~\lambda,R)

となります。よって式(8)は以下のようになります。

  • p(\vec~k(+j))\frac{\theta_j}{u_j}=p(\vec~k)f_j(\vec~\lambda,R)・・・・・・(9)

式(9)に式(2)を代入して

  • p(\vec~k(+j))\frac{\theta_j}{u_j}=p(\vec~k)\theta_j
  • p(\vec~k(+j))\frac{1}{u_j}=p(\vec~k)
  • p(\vec~k(+j))=p(\vec~k)u_j・・・・・・(10)

式(10)を導くことが出来ましたので、今までの議論からこのネットワークが積形式解を持つことが分かります。
M/M/2→M/1待ち行列の解析」に続きます。