M/n一般ネットワークの場合の積形式の証明(2)

先行エントリ:M/n一般ネットワークの場合の積形式の証明(1)


さて、状態\vec~kj番目の要素(つまり、ステーションjでのロット数)をk_jと表すことにします。そうすると、局所平衡方程式は、

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)}{t_{ej}}=p(\vec~k)\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^Np(\vec~k(+i))\frac{min(k_i+1,m_i)}{t_{ei}}r_{ij}・・・・・・(6)

という形になります。式(5)を式(6)に代入して

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=p(\vec~k)\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^Np(\vec~k(+i))\frac{min(k_i+1,m_i)\theta_i}{m_iu_i}r_{ij}・・・・・・(7)

式(7)を式(1)と比較すると、(1)で

  • \theta_j{\rightar}p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}
  • \lambda_j{\rightar}p(\vec~k)\lambda_j

と置き換えると(7)になることが分かるので、式(2)のf_j()を用いれば、式(7)は

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=f_j(p(\vec~k)\vec~\lambda)・・・・・・(8)

という形に解けるはずです。式(8)の右辺は式(3)を用いて

  • f_j(p(\vec~k)\vec~\lambda,R)=p(\vec~k)f_j(\vec~\lambda,R)

となります。よって式(8)は以下のようになります。

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=p(\vec~k)f_j(\vec~\lambda,R)・・・・・・(9)

式(9)に式(2)を代入して

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=p(\vec~k)\theta_j
  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)}{m_ju_j}=p(\vec~k)
  • p(\vec~k(+j))=\frac{m_ju_j}{min(k_j+1,m_j)}p(\vec~k)・・・・・・(10)

式(10)は、「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」における式(8)と式(9)と本質的に同じなので、同様の考察から、その利用率u_jに等しいM/M/m_j待ち行列における状態kの発生確率をp\left{M/M/m_j,u_j\right}(k)で表すと

  • p(\vec~k)=c_jp\left{M/M/m_j,u_j\right}(k_j)p(\vec~k(0j))・・・・・・(11)

となることが導けます。ただし状態\vec~k(0j)は状態\vec~kj番目の要素をゼロに置き換えた状態を表し、c_jは規格化定数を表します。以上の考察を全てのステーションについて行えば、

  • p(\vec~k)=p(\vec~0)\prod_{i=1}^Nc_ip\left{M/M/m_i,u_i\right}(k_i)・・・・・・(11)

となることが分かります。ただし、状態\vec~0は、全てのステーションでロット数がゼロである状態を表します。また、「M/M/2→M/1待ち行列の解析」で行ったのと同じ考察をすれば

  • p(\vec~0)\prod_{i=1}^Nc_i=1

であることが分かり、さらに式(11)が

  • p(\vec~k)=\prod_{i=1}^Np\left{M/M/m_i,u_i\right}(k_i)・・・・・・(12)

と書くことが出来ることが分かります。このようにして、このネットワークが積形式解を持つことが証明できました。これで当初の目的(「積形式解、ジャクソン・ネットワーク」を参照)であったジャクソンネットワークにおける積形式解の存在の証明が出来ました。
ジャクソン・ネットワークのサイクルタイム(1)」に続きます。