エルゴード性とは?(3)

エルゴード性とは?(2)」の続きです。
エルゴード性とは?(2)」でも定常的な確率過程を構成するのに失敗してしまいました。そこで次に考えたのは、サイコロの目をそのまま記録する紙(紙A)とは別に、もう一つ紙(紙B)を用意し、そこには今出た目の数と一つ前に出た目の数の和を記録する、そして紙Bに記録された数字の列について考察する、というものです。いわば二重帳簿みたいなことをして、考察するのはその一方のみにする、というものです。
このようにすると、例えば、1つ前での数字が12であれば、これは6+6の結果として出てきた数字に違いありませんから、1つ前でのサイコロの目は6だったことになります。そうすると今回の目が1から6までのどれになるかに対応して、記録される数字は7から12までのどれかになります。一方、一般的に考えて記録される数字のとり得る値は1+1=2から6+6=12までの数字です。よって、2から12までの数字が記録される可能性があるのですが、一つ前の数字が12である場合には7から12までに数字の可能性が狭められることになります。これは確かに過去の値が現在の値に影響を与えていることになりますから、私が今、求めているような(確率的に決まる)数字の列になります。


このような数字の列を考えた時に、エルゴード性が成り立つかどうかを考えます。下の図で、赤字で記した数字が、紙Bに書かれた数字です。

サイコロを振ることが1万人の誰にとっても、またどの時刻での振ることであっても、全て確率的独立ですから、その目を2つ足した値は、集合平均をとっても時間平均をとっても同じになることは明らかです。よって、集合平均=時間平均、になるのでエルゴード性が成り立ちます。(ところでエルゴード性が成り立つことを、エルゴード的である、とも言います。)
エルゴード性とは?(4)」に続きます。