エルゴード性とは?(4)
「エルゴード性とは?(3)」の続きです。
「エルゴード性とは?(3)」のやり方のほかにもうひとつ、定常的な確率過程を構成する方法を考えました。それはマルコフチェーンを利用する方法です。今までの例ではサイコロを用いていましたので、1〜6の6個の状態がありました。今、マルコフチェーンを利用するにあたって6個の状態のマルコフチェーンを考えると少し複雑なので、話を簡単にするために状態は0と1の2個だけ存在するものとします。
上図のようなマルコフチェーンを考えます。この図の意味するところは、今の状態が0である場合、次の時刻に状態が1になるのは0.2の確率、状態が0のままであるのは0.8の確率であり、一方、今の状態が1である場合、次の時刻に状態が0になるのは0.1の確率、状態が1のままであるのは0.9の確率である、ということです。このようにすれば、各時刻の状態の確率はその1つ前の状態に依存することが分かります。これはすなわち、過去の値が現在の値に影響を与えている、ということです。このようにして構成される数字(0と1)の列はエルゴード的でしょうか? すなわち集合平均=時間平均になるでしょうか? それをこれらか調べていきます。
今、状態が0であるとします。この図を使って計算すれば、次の時刻の状態0、1の確率はそれぞれ、0.8、0.2になります。その次の時刻の状態の確率は、やはりこの図を用いて計算すると
- 状態0の確率=0.8*0.8+0.2*0.1=0.66
- 状態1の確率=0.8*0.2+0.2*0.9=0.34
となります。その次の時刻の状態の確率は、やはりこの図を用いて
- 状態0の確率=0.66*0.8+0.34*0.1=0.562
- 状態1の確率=0.66*0.2+0.34*0.9=0.438
となります。これを繰り返していった結果を下のグラフに示します。(p0が状態0の確率、p1が状態1の確率を表しています。)
だんだん、確率が一定の値(状態0の確率が0.33333・・・、状態1の確率は0.66666・・・)に近づいていくありさまが見えると思います。
今度は逆に、今の状態が1であるとします。ここから上の図を用いて同様に計算すると今度は下のグラフのようになります。
やはり、確率は上の場合と同じ値に収束していきます。このことは何を意味しているのでしょうか? この例の場合、今の状態が0であろうと1であろうと、その15回あとの時刻の状態にはほとんど影響を与えない、ということを意味しています。
「エルゴード性とは?(5)」に続きます。