エルゴード理論への助走

ひとやすみ

「サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(1)」から「バーコフの個別エルゴード定理 記述3(その3)」までエルゴード定理の内容を自分なりに見てきましたが、その過程で感じたことは、エルゴード定理そのもの、つまり「サイバネティックス 第2…

バーコフの個別エルゴード定理 記述3(その3)

「バーコフの個別エルゴード定理 記述3(その2)」の続きです。 その次はこれです。 したがってがほとんど常にとる値は、 となる。 どうして「したがって」なのでしょう? 以下は私の推測です。 は保測変換なので よって、任意の自然数について ・・・・・…

バーコフの個別エルゴード定理 記述3(その2)

「バーコフの個別エルゴード定理 記述3」の続きです。 がある範囲の値をとるようなの集合の測度は、ほとんど常に1か0となる。 を解釈します。 図の2つの赤線ではさんだ範囲にが値を取るようなの集合(灰色の部分)をと表します。つまり です。そしての測…

バーコフの個別エルゴード定理 記述3

「バーコフの個別エルゴード定理 記述2(その3)」の続きです。 【記述3】 変換が測度可遷的であれば、がある範囲の値をとるようなの集合の測度は、ほとんど常に1か0となる。これはがほとんど常に一定でなければ不可能なことである。したがってがほとん…

バーコフの個別エルゴード定理 記述2(その3)

「バーコフの個別エルゴード定理 記述2(その2)」では、としたところ「測度可遷的」にはなりませんでした。反省してみるに、という整数倍すれば1になるような数を採用したことがマズかった、と思い当たりました。そこで今度はにしてみることにしました。…

バーコフの個別エルゴード定理 記述2(その2)

「バーコフの個別エルゴード定理 記述2」では有限集合を取り上げて「測度可遷的」の意味を検討しました。しかし、これは本来、無限集合を対象とするものです。そこでは要素の数を測度とすることは問題があります。それに集合の要素の個数は無限ですから、変…

バーコフの個別エルゴード定理 記述2

「バーコフの個別エルゴード定理 記述1」の続きです。 【記述2】 次に「測度可遷的」の意味を定義する。 「測度可遷的」とは、変換が、内の測度が0でも1でもないような点の任意の集合を不変にしない場合をいう。 これはなかなかおもしろい概念だと思いま…

バーコフの個別エルゴード定理 記述1

「バーコフの個別エルゴード定理」の続きです。まず記述1について考えてみます。 【記述1】 集合を考える。の測度は1とし、かつは保測変換によってそれ自身に変換されるものとする。上で定義された複素数値関数を考える。はに関し可測であるとする。 であ…

バーコフの個別エルゴード定理

「サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(1)」から「(3)」までの引用から、変換を用いた時のバーコフの定理の記述を再構成します。 記述1 集合を考える。の測度は1とし、かつは保測変換によってそれ自身に変換されるものとする。上で定義さ…

サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(3)

「サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(2)」のつづきです。第2章「群と統計力学」の引用を続けます。 ひじょうに興味のある場合は、いわゆる’エルゴード的’あるいは’測度可遷的(metrically transitive)’と呼ばれる場合であって、変換または変…

サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(2)

「サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(1)」のつづきです。第2章「群と統計力学」の引用を続けます。 ”ほとんどいたるところで”の収束を保証するバーコフのエルゴード定理では、がに属する場合、すなわち (2.20) である場合を扱う。 函数とと…

サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(1)

今までの「エルゴード性とは?(1)」から「エルゴード性とは?(6)」までの考察は、長年(20年ぐらい)私が理解できなかった「サイバネティックス」の第2章「群と統計力学」の記述に何らかの理解の光をあててくれているような気がします。それをこれ…

エルゴード性とは?(6)

「エルゴード性とは?(5)」の続きです。 そこで取り上げたマルコフチェーンの例のエルゴード性を証明するために、こう考えました。 上の2つのグラフにあるように、今の状態が0であろうと1であろうと15回あとの状態は状態0になるのが約1/3、状態…

エルゴード性とは?(5)

「エルゴード性とは?(4)」の続きです。 「エルゴード性とは?(4)」でマルコフチェーンの例を示して、この例の場合、現在の状態が0であろうと1であろうと、充分先の未来の状態の発生確率は一定になることを示しました。そこでこの0と1の列のエルゴ…

エルゴード性とは?(4)

「エルゴード性とは?(3)」の続きです。 「エルゴード性とは?(3)」のやり方のほかにもうひとつ、定常的な確率過程を構成する方法を考えました。それはマルコフチェーンを利用する方法です。今までの例ではサイコロを用いていましたので、1〜6の6個…

エルゴード性とは?(3)

「エルゴード性とは?(2)」の続きです。 「エルゴード性とは?(2)」でも定常的な確率過程を構成するのに失敗してしまいました。そこで次に考えたのは、サイコロの目をそのまま記録する紙(紙A)とは別に、もう一つ紙(紙B)を用意し、そこには今出た…

エルゴード性とは?(2)

「エルゴード性とは?(1)」の続きです。連続的な時間を扱うのは大変なので、しばらくは時間は離散的に流れると考えます。 さて、過去の値が現在の影響を与えるような確率的な時系列の例として以下のようなものを考えました。今度の数字の列は、サイコロの…

エルゴード性とは?(1)

エルゴード性とは 時間平均=集合平均 が成り立つという性質のことです。これでは何のことだか分かりませんので、私の理解している限りでの「エルゴード性」の意味を例を用いて説明いたします。 今、1万人が一列に並んでいるとします。そしてそれぞれ1名に…