バーコフの個別エルゴード定理 記述3(その2)

バーコフの個別エルゴード定理 記述3」の続きです。

f^*(x)がある範囲の値をとるようなxの集合の測度は、ほとんど常に1か0となる。

を解釈します。

図の2つの赤線ではさんだ範囲にf^*(x)が値を取るようなxの集合(灰色の部分)をE_1と表します。つまり

  • E_1=\{x|a{\le}f^*(x){\le}b\}

です。そしてE_1の測度が0でも1でもないものと仮定します。すると、E_1の全ての要素に変換Tを行ったTxからなる集合をE_2と表します。「バーコフの個別エルゴード定理 記述3」から

  • f^*(Tx)=f^*(x)・・・・・・(1)

ですので、E_2の全ての要素についてもf^*(x)は上記の図に示した範囲に入るはずです。よってE_1の定義から

  • E_1{\supset}E_2・・・・・・(2)

になります。つきにE_1の補集合E_1^Cを考えます。E_1^Cの全ての要素に変換Tを行ったTxからなる集合をE_2'と表します。ところで変換Tは集合EE自身に変換するので、E_1^Cを変換した集合は、Eを変換した集合E_2の補集合E_2^Cです。よって

  • E_2'=E_2^C

ここで式(1)を用いると、E_2^Cの全ての要素についてもf^*(x)は上記の図に示した範囲から外れるはずです。よってE_1の定義から

  • E_1^C{\supset}E_2^C

よって

  • E_1{\subset}E_2・・・・・・(3)

になります。式(2)と式(3)から

  • E_1=E_2

これは、変換Tに対して不変な、測度が0でも1でもない集合が存在することになるので「測度可遷性」に反します。よって仮定の「E_1の測度が0でも1でもない」が否定されるので、E(すなわち「f^*(x)がある範囲の値をとるようなxの集合」)の測度は0か1、ということになります。
f^*(x)の範囲を、1つの値だけを含むように狭めることで、f^*(x)がある値をとるようなxの集合の測度は0か1になるということになります。これが

これはf^*(x)がほとんど常に一定でなければ不可能なことである。

の意味するところであると理解しました。「バーコフの個別エルゴード定理 記述3(その3)」に続きます。