QNA(10)(11)へのメモ(2)

QNA(10)(11)へのメモ(1)」の続きです。

  • 合流される元の流れが1個しかない場合、つまりまったく合流がない場合には、合流元c_1^2と合流後c_H^2で2乗変動係数が同じでなければならないはずなのに式(34)ではそうはなっていない。

ということの意味を述べます。
合流される元の流れが1個しかない場合には、合流元の到着レートは

  • \lambda_1

だけであり、式(35)は

  • v=\left[\Bigsum_i\left(\lambda_i/\Bigsum_k\lambda_k\right)^2\right]^{-1}=\left[\Bigsum_i\left(\lambda_i/\lambda_1\right)^2\right]^{-1}=\left[\left(\lambda_1/\lambda_1\right)^2\right]^{-1}=[1^2]^{-1}=1

よって

  • v=1

これを式(34)

  • w=[1+2.1(1-\rho)^{1.8}v]^{-1}・・・・・・(34)

に代入すると

  • w=[1+2.1(1-\rho)^{1.8}v]^{-1}=[1+2.1(1-\rho)^{1.8}]^{-1}・・・・・・(ア)

となって必ずしもw=1になりません。一方、式(33)は

  • c_H^2=w\Bigsum_i\left(\lambda_i/\Bigsum_k\lambda_k\right)c_i^2+1-w・・・・・・(33)

ですが、合流される元の流れが1個しかない場合には、上と同様に考えて

  • c_H^2=wc_1^2+1-w

よってw=1かあるいはc_1^2=1かのいずれかが成り立たなければ

  • c_H^2=c_1^2・・・・・・(イ)

にならない。ところが今、合流元の流れの到着間隔の2乗変動係数c_1^2には何も条件をつけていないのでc_1^2=1とは言えない。また式(ア)から必ずしもw=1とは言えない。よって式(イ)とは言えないということです。これは矛盾です。
ここまでのところをまとめると、式(34)は(1-\rho)の指数は1.8ではなくて2にならなければならない、さらに、v=1w=1にならなければならない、ということです。このためWhittは式(34)を改良して

  • w=[1+4(1-\rho)^2(v-1)]^{-1}・・・・・・(ウ)

(式(29)の添え字jを落とした)を用いた、ということです。


これで重ね合わせのための一連の式が揃いました。それをまとめて記すと

  • c_H^2=w\Bigsum_i\left(\lambda_i/\Bigsum_k\lambda_k\right)c_i^2+1-w・・・・・・(33)
  • w=[1+4(1-\rho)^2(v-1)]^{-1}・・・・・・(ウ)
  • v=\left[\Bigsum_i\left(\lambda_i/\Bigsum_k\lambda_k\right)^2\right]^{-1}・・・・・・(35)

です。


これらの式が導出された経過をまとめると、まず漸近法による近似

  • c_A^2=\Bigsum_i\left(\lambda_i/\Bigsum_k\lambda_k\right)c_i^2・・・・・・(31)
    • 「W. Whitt,「再生過程による点過程の近似、?:2つの基本的方法」Oper. Res., 30, No.1 (January-February 1982),pp.125-47.」参照

が出発点であり、それを改良して式(33)を導き、式(ウ)と(35)は広範囲なシミュレーションと理論的考察の両方から導き出された、ということになります。


この論文「Word Whitt: The Queueing Network Analyzer」の翻訳が完了したら、次は上記論文にトライする必要がありそうです。