Word Whitt: The Queueing Network Analyzer(16)
「Word Whitt: The Queueing Network Analyzer(15)」の続きです。
今日も2ページ。
6.1 システム混雑尺度
ひとつの基本的な総ネットワーク・パフォーマンス尺度は「スループット」であり、これを我々は「総外部到着レート」として定義する。(72)ノードで客の生成がない場合、総外部到着レートはネットワークからの総出発レートに等しく、スループットが何を意味するかについてほとんど曖昧な点がない。しかし、セクション2.2でのように、客がノードで生成されたり組合せられたりする場合、2つ以上の可能な解釈が存在する。我々は到着が処理されるレートに、つまり(72)に興味があるだろう。例えば、ノードで生成される客は到着に対してサービスを行うためにしなければならない余分な仕事としてのみ見なされるだろう。反対に、我々は客がネットワークを離れるレートに、あるいはサービスが完了するレートに興味を持つだろう。「ネットワークからの」出発「レート」は
(73)であり「サービス完了の」総「レート」は
(74)である。
混雑全体の記述はネットワーク全体の客の数の平均と分散によって提供される。一般に、
(75)であり、ノードは独立であると仮定することに基づいた近似として
(76)を得る。式(76)はマルコフ的モデルについては積形式解の結果として正しいが、一般には近似である。
6.2 集約客の経験
我々が、個々の客が経験する混雑に向かう時、非常に異なる2つの方法が存在する。最初の方法はセクション2.1の標準インプットを持つモデル仮定を厳守し、ルーティング行列を独立な確率(マルコフ的ルーティング)と解釈することに基づく。これは、任意の客がノードのサービスを完了する時は毎回、その客はネットワークの現在の状態と履歴に独立に確率でノードに進むことを意味している。もしネットワークが円環状であれば、これは全ての客がいくつかのノードを2回以上訪れる正の確率を持つことを意味する。これは集約客の見方である。どの個々の客も実際には同じノードを2回以上訪れないということはありそうである。
もし集約ビューが望まれると、客の経験はKemenyとSnell*1の第III章にあるような吸収マルコフ・チェーンの基本理論を用いて記述出来る。我々は外部ノードを、全ての客がネットワークを離れる時に向かう単一の吸収状態であると見なすことが出来るし、あるいは、異なるノードやノードの部分集合からのネットワーク出発を区別するために、我々はより多くの吸収状態を持つことも出来る。この解釈では、ルーティング行列は吸収マルコフ・チェーンと関係する遷移サブチェーンであり、の場合の(19)における逆行列は吸収チェーンの「基礎行列」である(KemenyとSnell*2のp.45を参照)。トラフィック・レート方程式を解くことは、この基礎行列を解くことに等しい。
基礎行列から(外部到着過程において)任意の状態から始まって任意の状態を訪れる回数のモーメントを計算することは容易である。例えば、は単にの番目の要素である。任意の初期分布から始めて各々の吸収状態への吸収の確率を計算することも容易である。これらのさまざまな混雑尺度は行列を扱って容易に得られる。*3
我々が外部到着過程で到着する任意の、あるいは典型的な、あるいは集約の客に注目するとしよう。するとその客はノードに確率で入り、ここには(72)で定義され、ノードを個々の客が訪れる期待回数は、
(77)である。(を得るために基礎行列を使用した。) 任意の客がネットワーク内にいる間、ノードで費やす時間の平均はよって
(78)であり任意の客の期待総滞在時間(最初の到着から最後の出発までネットワーク内で費やす時間)はよって、
(79)である。の分散はよって
(80)である。(80)の項はと同様、基礎行列から容易に得られる。特に、であり
(81)ただしは基礎行列であり、は非対角要素が全て0で対角要素がと同じ行列である。