QNA読解:I.導入とまとめ(1)

上位エントリー:Word Whitt: The Queueing Network Analyzerの構成
この論文

は一般の待ち行列ネットワークについて述べたものですが、私のいつもの関心事である「工場運用への適用」を念頭において、読解を進めたいと思います。ここではまず、QNAで扱うのはどんなモデルであるかを述べています。

 以下がモデルの概要である。ノードと矢印のネットワークがある。ノードはサービス、設備を表し、矢印は客あるいはジョブあるいはパケットの流れを表す。

Factory Physicsの言葉に置き換えれば、「ノード」は「ステーション」、「客」は上記引用にある通り「ジョブ」と考えればよいでしょう。もっと工場よりの用語を用いるならば「ロット」とか「ワーク」という言葉になります。

また外部ノードも存在し、これはサービス設備ではなく、外部世界を現わす。客は外部ノードから内部ノードへの矢印を通ってネットワークに入り、内部矢印に沿ってノードからノードへ移動し、最後に内部ノードから外部ノードへの矢印の一つに沿ってシステムを離れる。

これはジョブが生産ラインの外からやってきて、いくつかのステーションで処理され、最終的に製品として生産ラインから出て行く様子を模擬している、と解釈出来ます。

矢印の客の流れは、確率過程として表現され得るようにランダムであると仮定する。

ここの文章だけからはその意味がよく分かりません。その後の文章を参考にすると、あるステーションジョブが処理を終えた後、次にどのステーションに向かうかは「ランダムである」、比ゆ的に言えば「処理を終えたあとでサイコロを振って決める」ということです。これは、多くの生産ラインでは当てはまりません。多くの生産ラインでは、多くの場合、次のステーションは確定しています。この点については、のちほど検討します。

 もし客が到着した時、ノードで全てのサーバがビジーならば、客は待ち行列に入り、サーバが空くまで待つ。空いているサーバがある場合、客はサービスを開始し、それは中断なく実行される。個々のノードでの後続のサービス時間は確率変数であると仮定され、これは客のタイプに依存するかもしれないがネットワークの履歴には独立であり、相互に独立で同一の分布である。客はサービスを完了した後、そのノードから別のノードへ向かう矢印にそって動く。

上記は通常の待ち行列モデルの動作を述べたものです。問題はないでしょう。

客はこのようにいくつかの内部ノードからサービスを受け、最後にネットワークを離れる。典型的な(外部ノードのない)ネットワークの絵を図1に示す。

図1:待ち行列の開放型ネットワーク

これは、通常の「開放型ネットワーク」の説明と考えればよいでしょう。


QNA読解:I.導入とまとめ(2)」に続きます。