いろいろご教示頂きました

8月24日の早朝にpawnさんという方から、私の2月2日のエントリー

に対して詳細なコメント(教示)を頂きました。私の現在の知識と能力でどこまで理解出来たかを明確にするために、今日、ここで取り上げようと思います。こういうご教示を頂けるのは本当にうれしいです。私にとってはちょっとした事件です。

クラスは客の種類と読み替えてかまいません.ネットワークの送信元と送信先のペアで複数の種類の客を考えることができますし,工場だったら,ボルトと鉄板のように種類を考えることができます.そういう区別をクラスに一まとめにしています.


pawnさんのコメントより

これは、私の

ところでBCMPネットワークについては、ORWikiの「BCMP」によれば、

客数ベクトルの定常確率が積形式で与えられる待ち行列ネットワーク のひとつで,ジャクソン型を拡張して客にクラスを設け, サービス規律をより一般的にしたもの. サービス時間分布は,先着順の場合は指数分布のみであるが,プロセッサ・シェアリング,無限サーバ,後着順割込継続型の場合は,任意の分布が許される.この結果は1975年にバスケット(F. Baskett)らによって発表されたが,その後この論文の著者4人のイニシャルをとって,BCMP型と呼ばれている.

とのことですが、今の私には何が何だかさっぱりです。特にクラスという言葉が分かりません。

と書いたことに対する答ですね。
ええ、最近、私はクラスということが分かってきました。


次に私が

さらに、ORWikiの「《積形式解ネットワークとなるための条件》」によれば

待ち行列ネットワークの定常分布が解析的に求められるのは,ジャクソンBCMPネットワークのように定常分布が各ノードの周辺分布の積として表されるとなる場合と,集団移動型ネットワーク(batch movement network)などで,特殊なサービス規律を適用した場合などに限られている.

と書かれているので、ジャクソンネットワーク以外にも積形式解の存在するネットワークがあるようです。

と書いたことに対してだと思うのですが

積形式解が成立するネットワークの条件は,普通の待ち行列であれば,各ノードが準可逆であることです.ノードAが準可逆であるとは,仮にポアソン過程に従った入力をノードAに入れたら,その出力もポアソン過程になる(パラメータは入力と異なっても良い)という性質です.準可逆性のチェックはノードをネットワークから抜き出してできます.


pawnさんのコメントより

「積形式解が成立するネットワークの条件は(普通の待ち行列であれば)各ノードが準可逆であること」 そのようなことをどこかで読んだのですが、「準可逆」の意味が分からなくて、意味が把握できていませんでした。これでイメージがつかめました。さらにpawnさんがわざわざ「普通の待ち行列であれば,」と書いておられる意味は、普通でない待ち行列もあるということでそれについては

普通でない待ち行列とは,負の客というものを考えます.負の客が到着すると人を1人減らしてしまいます.まあ,何かの信号だと思ってください.信号は役目を終えたら消えることもできますが,消えずに他のノードにも訪問できるものです.負の客を考慮すると,準可逆性が成立しない場合であっても積形式になることがあります.


pawnさんのコメントより

とのことだそうで、私は始めて知ることなので「へー、そうなんだ〜」と思いました。さらに

(準可逆性が全てのノードで成立するならば必ず積形式になります)


pawnさんのコメントより

とのこと。はい、了解しました。


さらに

積形式解には,もう1つの積形式成立のための条件があります.それは局所平衡性と呼ばれるものです.こちらの方が使いやすい条件らしいのですが,実は準可逆性と積形式+ある種の局所平衡性は同値であることが示されています.


pawnさんのコメントより

これも「へー、そうなんだ〜」です。

局所平衡性はN個の方程式だと思ってください.更にこれらの両辺を足し合わせたものが大域方程式と呼ばれています.大域方程式は,あるマルコフ連鎖の定常方程式です.このマルコフ連鎖は,状態がN次元ベクトルのものです.つまり,N次元ベクトルを1つの状態としてみたときのマルコフ連鎖を定常方程式の意味でN個の方程式に分解できるということです.ただ,無意味に分解することは誰でもできるのですが,分解されたN個の方程式がやはり1次元ベクトル(つまりスカラー)を1つの状態としてみたときのマルコフ連鎖の定常方程式になっているところがポイントです.

直感的には,ネットワーク全体を見たときの状態に関する情報が,あるノードだけに着目したときの状態に関する情報へと分解できるという性質です.(ややこしいですが)


pawnさんのコメントより

一応、局所平衡方程式と大域平衡方程式については理解しているつもりですので、ここの内容は理解できます。とはいえ、私が理解しているのはジャクソンネットワークについての局所平衡方程式と大域平衡方程式ですが・・・

一般に積形式でないが局所平衡性は成り立つというネットワークもあるようなので,局所平衡性だけでは積形式かどうかはわかりません.


pawnさんのコメントより

はあ、そうなんですか。

多変数の確率分布が各変数の確率分布の積でかけるという性質は独立性を意味していることはご存知かもしれません.


pawnさんのコメントより

はい、理解しております。

しかし,ネットワークは隣接するノード間でとても強い依存性を持っています.なぜ積形式解が存在するのか疑問に思うことはありませんか?


pawnさんのコメントより

思います。だからジャクソンネットワーク積形式解が存在することは驚きなのです。

その答えは,定常な状態というのを考えているからです.定常な状態とは,時間が進んでも確率分布が変化しないということです.初期状態で定常分布を選んでおけばそれ以降は変化しません.しかし,普通,工場などのネットワークは最初は何も客がいないはずです.従ってP(0,0,0,0,...,0)=1 で他の状態の確率は0となります.
例えばノード1に100人いて他のノードには0人の客がいる確率はP(100,0,0,0,...,0)=0 です.でもシステムが稼動するとこの確率分布は変化していきます.だから,初期状態で定常分布を選ぶことは直感に合いません.
しかしながら,システムが安定な条件(あえてシステムの安定条件については説明しません)の下では,時間を十分進めたときの確率分布が定常分布に近づくことがしられています.つまり初期状態で定常分布を選ぶとは時間を十分進めたということに対応します.

ネットワークの定常分布が各ノードの状態に関する定常分布の積とかけるというのは極限分布が積の形に近づくということです.従って極限をとる前の分布は積の形になっていなくても良いというわけです.


pawnさんのコメントより

理解しました。


pawnさん、本当にありがとうございます。