QNA読解:4.3 重ね合わせ(1)
上位エントリー:Word Whitt: The Queueing Network Analyzerの構成
「QNA読解:4.2 トラフィック変動方程式(1)」の続きです。
「4.3 重ね合わせ」についてはすでに「QNA(10)(11)へのメモ(1)」「QNA(10)(11)へのメモ(2)」で読解を行いました。ここではそれを今の私の知識で再度レビューしていきます。
このセクションの目的はノードに複数の流れが入ってくる場合に(重ね合わせ、合流の場合に)、それぞれの流れの諸パラメータから全体としての流れの到着間隔の2乗変動係数を(近似的に)求めることです。
まず
近似は全てWhitt*1における基本方法、すなわち、漸近法と定常間隔法、に基づいている。
と書かれていることに注目します。ここから、この漸近法と定常間隔法を理解するためには論文
- W. Whitt,「再生過程による点過程の近似、I:2つの基本的方法」Oper. Res., 30, No.1 (January-February 1982),pp.125-47.
を読む必要があります。幸いこの論文もWhitt教授のウェブに出ています。それに、木村俊一教授の
にも解説があります。しかし、どちらも読み始めたのですが、残念ながら私の今の知識では理解出来ませんでした。
以下は、今の私が理解できる範囲で読解していった内容です。
重ね合わせ後の流れの到着間隔の2乗変動係数の近似値を、漸近法で近似した場合は(Aは漸近asymptoticの頭文字から来ているようです)で、定常間隔法で近似した場合は(SIは定常間隔stationary-intervalの頭文字から来ているようです)で、表しています。しかし、この両者も
しかし、漸近法も定常間隔法も単独では広い範囲の場合に渡ってあまりうまくはいかない。
ということだそうです。この詳細は
- W. Whitt,「Queueing Network Analyzerのパフォーマンス」B.S.T.J., this issue.
のセクションIIIを参照と記されているとのことです。
とにかくうまくいかないのでAlbinという人がこの両者の凸結合(片方に重みをかけて、もう片方には重みをかけて足したもの。ただし[tex:0
- ・・・・・・(31)
であって、これは合流するそれぞれの流れの到着間隔の2乗変動係数について線形であるが、定常間隔法による、合流後の流れの到着間隔の2乗変動係数は、合流するそれぞれの流れの到着間隔の2乗変動係数について線形ではない、とのことです。よってAblinが提案する両者の凸結合による近似
- ・・・・・・(32)
もについて線形ではないので(言外に)扱いにくい、近似として不適切、とWhittは考えているようです。そこで(32)よりも若干精度が悪くなるがについて線形な
- ・・・・・・(33)
を採用した、ということです。ここでの値を決めなければなりませんが、Albinは
広範囲なシミュレーション
によって
- ・・・・・・(34)
- ただし
- ・・・・・・(35)
と定めたとのことです。
「QNA読解:4.3 重ね合わせ(2)」に続きます。
*1:W. Whitt,「再生過程による点過程の近似、I:2つの基本的方法」Oper. Res., 30, No.1 (January-February 1982),pp.125-47.