QNA読解:4.3 重ね合わせ(2)
上位エントリー:Word Whitt: The Queueing Network Analyzerの構成
「QNA読解:4.3 重ね合わせ(1)」の続きです。
Whittは前回の最後に登場した式(34)
- ・・・・・・(34)
は改善されるべきだ、と言います。
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- ところで論文には「重み関数(58)はある重要な一貫性条件を満足することに失敗する。」と記述されていますが、これは誤植で本当は「重み関数(34)は」でしょう。
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Whittは改善が必要な理由を2つ挙げています。
- ①合流される元の流れが1個しかない場合、つまりまったく合流がない場合には、合流元と合流後で2乗変動係数が同じでなければならないはずなのに式(34)ではそうはなっていない。
- ②新しい理論によれば式(34)のの指数は1.8ではなくて2にならなければならない。
まず①について述べます。
合流される元の流れが1個しかない場合には、合流元の到着レートは
だけであり、式(35)は
よって
これを式(34)
- ・・・・・・(34)
に代入すると
- ・・・・・・(ア)
となって必ずしもになりません。一方、式(33)は
- ・・・・・・(33)
ですが、合流される元の流れが1個しかない場合には、上と同様に考えて
よってかあるいはかのいずれかが成り立たなければ
- ・・・・・・(イ)
にならない。ところが今、合流元の流れの到着間隔の2乗変動係数には何も条件をつけていないのでとは言えない。また式(ア)から必ずしもとは言えない。よって式(イ)とは言えないということです。これが上の①の意味です。
次に②について述べたいのですが、この「新しい理論」というのは以下に書かれているとのことで、私はこれを入手出来ていません。
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- W. Whitt,「高負荷の重ね合わせ到着過程を持つ待ち行列」 unpublished work, 1982.
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ですから今の私はこれ以上の説明が出来ません。
以上の①、②からWhittは式(34)を改良した式
- ・・・・・・(ウ)
を提案しました。(説明を簡単にするために、論文中の式(29)の添え字を落としました。)
ともかくこれで重ね合わせのための一連の式が揃いました。それをまとめて記すと
- ・・・・・・(33)
- ・・・・・・(ウ)
- ・・・・・・(35)
です。
これらの式が導出された経過をまとめると、まず漸近法による近似
- ・・・・・・(31)
- 「W. Whitt,「再生過程による点過程の近似、I:2つの基本的方法」Oper. Res., 30, No.1 (January-February 1982),pp.125-47.」参照
が出発点であり、それを改良して式(33)を導き、式(ウ)と(35)は広範囲なシミュレーションと理論的考察の両方から導き出された、ということになります。
「QNA読解:4.4 分岐」に続きます。